「胎動 大学を自らの手に」 1974.4

 これを棄てたら我が精神が消えて無くなる。そういうものとの出会いがあると、つい時を戻してしまう。
 『胎動 大学を自らの手に』新入生歓迎実行委員会 という小冊子こそ我が魂の原点。ぼくが「教育大と私」というエッセイを寄稿している。1974年4月発行だからぼくが大学院博士課程に在学中のこと。新入生歓迎実行委員会から寄稿を求められて執筆した。書き出しは、
 我が心の中には
 新しい人間ができたのだ
 ああ見よ 我が魂は高まるよ。
 赤児のように
 わしは新しいミルクを飲む
 我が心がもはやあのむなしい
 作りごとで満たされないために。
である。梅根悟先生の『世界教育史』から借用した、十字軍の時代の学生―放浪学生―の歌の一節である。ぼく自身が経験した学問の自由・自治尊重の学生生活が権力によって弾圧され、自由な論議を学外の喫茶店を借りて為すしかなかったむなしい出来事を、後輩たちにきちんと伝え、学問を真に自立あるものとしていきたいというメッセージを送るエッセイである。「・・・この苦しみの中にあっても、多くの学友は教育大に伝統的な自主ゼミなどを失わなかった。大学で定められたカリキュラムだけで勉学すればいい、そんな主体性のない学生生活は廃せられるべきだ、そう私は先輩や教師から幾度聞かされたことか。・・・・」

 荷物の整理の中で見つけた珠玉の宝。今さらながら、ぼく自身が生きる道を探し当てた思いである。