お巡りさん、がんばってます

 隣り合わせと言っていい町会で新年会があった。その前日からすこぶる体調が悪く、新年会もつらい場となった。とりあえず最後までおつきあい。外に出ると真っ暗である。我が家の方にアテを向けて歩き出したが、どうやら道に迷ったらしい。車通りに出てバス停で地名を確かめ、方向を見定めたところへ、バスがやってきた。行き先表示でぼくが向かっているのは反対側らしいと思い、Uターン。テクテクテクテク・・。隣町なのになぁ、でも闇夜を歩いたことはないなぁ、このあたり、長女がまだ幼き「天才」であった頃自転車の荷台に乗せて走り回ったところだよなぁ、それにしても建物類にまったく見覚えがないなぁ、などとつぶやき、そして「もーしもし、べんちでささやく、おーまわりさーん♪はーやくおーかえり・・・」と声を出して唱い、ちょっと感じる怖さを拭き払っていたところへ、
「もしもし!」
との声掛かり。びっくりして逃げだそうとしたけれど、身体は不調で足許がふらついているから、逃げ出すことも出来ない。おっかなびっくり声の主の方を見ると、大きな身体のお巡りさん。あらぁ、歌の「お二人さん」を「おまわりさん」と呼びかけ変えたから、返事したのかしら・・・?
「おじいさん、どちらへ?」
身体は不調でも、こういうシチュエーションになると、心はしゃんとする。
「ただいまわたくしは 徘徊中です。」
お巡りさん、電灯をぼくの足許から頭まで照らし(まぶしいねぇ、あれ)、
「本官は、ただいま、巡回中であります。 気をつけてお帰りを。お宅は反対方向ね。」
見知ったお巡りさんでありました。で、指さし方向に引き返して、再び、トコヨロトコヨロ・・・。
・・・それからたっぷり30分ほど、すっかり建築様式が変わった団地の中をさまよい歩き、ようやく我が家への道と分かる道を見出し、帰宅した。
 駅と我が家を往復するしかない日常で、ついに、駅とは反対方向の地理を、感覚で甦らせることができないようになってしまっている。
 どういう訳か、この翌日から身体がたいそう軽く、速歩生活を取り戻している。お巡りさん、ありがとう、なのかな。
・・・
 庭の花桃の新芽写真を改めて。