惚れ込んだ実践家 その他

 中高の教員養成をもっぱらとしている我が教職課程だが、毎年のように、「小学校の免許を取得したい、どうしても小学校の先生になりたい。」と相談に来る学生がいる。そういうときには、ぼくが惚れ込んだ実践家ならびに実践記録類を紹介することにしている。それらは、日本教育史を実践的に形成した、と評してもいいが、ぼく自身がその先生たちの教室に足を運び、幾度も交流をした方々を学生に紹介するという観点からすれば、「人間教師」の紹介であろうか。本谷宇一さんの新著『子どもが「発問」する学びの教室―「学習材」で変わる国語の授業―』(一光社、1600円+税)もその一冊の仲間入り。自主ゼミで学習しましょうと呼びかけている。「実践家をお呼びして、ね。」とことばを添えて。今日、まとまった数が研究室に届けられた。
 ものはついでと、一光社に、「笠原紀久恵先生のトモボクは在庫がありますか?」と尋ねた。ある、との返事。埼玉大学時代のゼミ合宿で笠原先生の教室を訪問して以来、我がゼミ生は笠原ファンとなった。その世代は、「大地の会」という教育実践研究サークルを作ったが、その名の由来は、笠原先生の学級通信のタイトル「大地」から来ている。そのメンバーも多忙を極める世代となり、日常的な「大地の会」活動は出来なくなってしまったけれど、笠原先生からいただくお便りには、必ずと言っていいほど、大地の会のメンバーの実践の「宝」に触れておられる。
 もう一度、ぼく自身の教育の原点に戻ろうと思い、トモボクを注文した。
 ==================
 今日は気分がいい日。セガンはちょっと脇に置き、久し振りにパリ・コミューン文献調査に関連して。
 2000年度パリ生活の中で、パリ歴史図書館でパリ・コミューン関連の文献調査を行った。パリ・コミューンを議事録から捉えようと思い、議事録の閲覧をした。議事録と言っても「当事史料」のクリティーク版は古書店で入手していたので、そこでの記入漏れ等があれば正したい、つまりクリティーク版のクリティークをしたいと思っての行為だった。閲覧可能、ただしコピー厳禁と言ってリファレンス係が出してくれたのが、J. D’ARSAC, "Les Conciliabules de l’Hôtel-de-Ville Comptes-rendus des séances du Comité central et de la Commune"(1871, F. COROT, Éditeur)。同書の存在は知っていたので飛び上がるほど嬉しい思いがしたことを思い出す。その稀覯書を、今日、全編コピー入手が出来た! 同書は、"Paris Journal"に掲載された議事録を採録しており、クリティーク版議事録以外の記録を散見することができる。この記録は、表題(オテル・ド・ヴィルのひそひそ話)からも知ることができるように、パリ・コミューンに対して批判的な立場から記録・編集されたものである。しかし発言記録などは正鵠を得ていると言われている。久し振りだなあ、この感慨。