お掃除、お手入れ、怖かった。

jittyan2011-04-17

 本格的に授業が始まるとなかなかできないと思い、朝から念入りな掃除、庭の草むしりをした。掃除といってもぼくが占領している空間と共用空間、そして猫たちの隠り場。
 庭の草むしりは、かつての「炎天下に天頂禿を思い知る」を再現してはならじと、帽子をかぶり、首にタオルを巻き付け、軍手をし、スニーカーを履いてしっかり武装した。草むしりをしながら、「ああ、この草、兎の餌にええのになぁ」と故郷での兎飼育のあれこれを思い出し、かつ「腰痛うてかなん。」と早々と労働放棄する姿を「何言うとる、子どものくせに。」と母に厳しくとがめられたことを懐かしく思っていた。もっとも今は腰が痛くなるほどの土地面積がございません故、腰痛は思い出だけに留まった。
 さて、一仕事を終え、近所の中華食堂に出かけた。かわいい男の子一人と若い夫婦が先客。注文を終え置き新聞に目を通していたところ、男の子がブラブラ店内を歩き始めた。とーちゃん、かーちゃん、二人そろって携帯の画面に見入っている故、子どもは退屈したのだろう。あれやこれやと手にとっては落とし、戻しを繰り返す。ああ、興味津々なんだなぁ、とその姿を眺めていたが、給湯器を触り始めたところで、はらはら。レバーを押したのが水の方だった!たまらず、「お二人して携帯に見入っておられますが、どちらかお一人は子どもさんの様子に注意をされるべきではないですか。お子さんが店のあれこれを触りまわっていますよ。」穏やかな声で−あくまでもぼくとしては、だが−ご注意申し上げた。かーちゃんの方が「すみません。」と謝られたので、「いや、私に謝られてもね。」と言ったのがいけなかったのか、突然、とーちゃんが「キレ」なさった。「なんか壊したんか。」「いや壊していません。」「おめえだって店のものさわっとるで。」「この新聞はこの店が客にサービスで置いているから触っていることは問題じゃない。」「テーブルにさわっとるで」「ここは食堂ですから、テーブルに触らないでは食べれらない。」あー言えばこー言うの、本領を発揮してはいるものの、とーちゃんがますます恐ろしげな顔をし、拳を固く握り始めた。ああ、ここで白旗かいな、んにゃ、そうはいかんで。「うちの子、なんか壊したんか。」「いや、さっきも言ったけど、壊してない。」「なら出しゃばるな。」「壊してからでは遅い。お湯を被ってやけどしてからでは遅いから、ご注意申しただけ。」とーちゃん、拳を振り上げ、かーちゃん拳を必死で押さえる、とーちゃん脚を蹴上げ、じいちゃんさらりと交わす。…いや、さらりじゃなかったな、やっとのことで、だ。とーちゃんの手加減いや脚加減があったからだろう。聞こえない声でなんかとーちゃん言ったので、耳に手を当てて「ごめん、オレつんぼ、聞こえん。」と怒鳴りあげたら、「もうええわ。」と静まった。
 いや、まだ注文の品は両卓とも来ない。間が持たない。はよ来い、はよ来い!間を持たせるために新聞を元に戻しに行こうと席を立ったら、とーちゃんの脚が絡みついてきた。オッと、年は取ってもまだバランス感覚はあるで…怖いなぁ、ほんま。えがったえがった、蹴りが入らなくてえがったのー.蹴りが入っていたら、そりゃあ、血が流れるで。映画ではね。

 子どもは無邪気にはしゃいでいる。かーちゃんしっかり子どもの相手している。とーちゃんブスッとじーちゃんにちらりちらり目をやる、じーちゃんオドオド…時間はなかなか過ぎない。かーちゃんが「親の義務」を実践し始めたのだからえがったえがった、と言いたいところだけどな。
  何でか分かりませんが、ラーメンを大急ぎですすり這々の体で逃げ帰ったのでした。近所の食堂だけど、もう行きませんっ。