セガン教具

 これまでブルヌヴィルによって描かれた図版のすべてプラス・アルファがセガン教具だと思い込んできた。清水寛編著『知的障害教育・福祉の源流―研究と大学教育の実践』(日本図書センター、2004年)の資料編に、清水先生から依頼されて作業したマーブル・タルボットによって採録されたものの翻訳によって、そのように思い込んできた。それがいま、研究のアシストとして行っているブルヌヴィル原著の読みによって、「セガン教具」と「セガン以降の教具」とがあるように思われてきた。セガンは図版を残していないが、1843年著書や1846年著書、あるいはそれ以前の実践の記録を丹念に読めば、「セガン教具」が浮かんでくるはず。ガトー先生のブルヌヴィル研究には、セガンの著書記述と対比させて、「セガン教具」を論じていたことを思い出した。また、1842年著書によって、ぼくは「石工の梯子」と「石切り工の梯子」が実践に使われたことを知り、その実物を探し求め歩いたではないか。こんな具合ー
「2009年6月16日 火 腫れ
 朝から古文書館前の新聞・雑誌を主とした古書店を訪問。illustration紙の入手はできなかった。その後、セガンの教具のひとつとなった「石工の梯子」「石切工の梯子」を確かめるべく工芸館に行く。残念ながらこれも成果なし。ただ、5メートルもの梯子がどれほどのものなのか、建築現場の模型展示で実感することができた(石工が石を運んでいるのか?)。これは成果というべきか。「石工・石切工の梯子」の原語を再度確認し、再調査を行いたい。」
 まずはブルヌヴィルをきちんと読み、セガンの著書を丹念に紐解くことによって、「セガン教具」の実際を描き直すことが可能であろう。膨大な作業が必要ではある。「1842年第1著書」にある記述より―
「第1の梯子 ― たとえ筋肉系統の一般的な発達をなおざりにすることがないにせよ、上記にかかわる訓練では腕と手を動かす必要があります。2つの梯子、すなわち1つは石の積み上げをする職人(石工、maçon)のそれ、もう1つは石を切る職人(石切工、carrier)のそれ(多少改造したもの)です。その2つの梯子があれば他の活動への予備活動をうまく進めるために十分です。・・・・・」
「第2の梯子。 ― もう一つの梯子は非常に太い木で出来ています。側面は穴が開いていたり出っ張り棒があったりの凹凸が階段状に作られています。子どもたちは傾けて立てかけられたその梯子に背をあててよじ登ります。地面に一番下のところの出っ張り棒に足裏を乗せ、頭より高いところで出っ張っている棒を手で掴みます。腕を引き寄せて、子どもは脚で階段を上り、新しい支点で身体をまっすぐに立てます。さらに、梯子に身体をあてて、手で、上の階段に登ります、続けてさらに高く。高いところで、子どもの脚は梯子の胴体部に置かされます。この命令に従わされたことで、落ちるという不安のため、子どもの手は常ならざる力を持つようになります。そして子どもは吊り下がるわけですが、実のところは、背中が梯子にくっついているわけですから身体の重みが少なくなるような姿勢ですし、その一方で、肩が完全にひっこむような姿勢です。そして梯子の凸状の出っ張りで胸がふくらんだ姿勢となります。・・・」
という具合。