研究業績まとめ

 次のように綴った。
学習院大学に着任後の研究課題は1)学校教育における自由、2)フランス19世紀における教育の自立、3)その他に大別される。1)が1992年以降今日まで、2)が2001年以降今日まで、となる。3)その他は担当授業科目等に関わる研究である。
1) 学校教育における自由について
 この課題に掲げられている「学校」とはいわゆる「近代学校」のことであり、「自由」とは、「近代学校」を特徴づける均一教科書(我が国に擬していえば検定教科書)、教師(授業の運営から評価までの主導者。教師中心主義)、教室(教育=学習の場の固定)、時間割(固定したカリキュラム)からの自由を意味するとともに、「近代学校」に代わりうる「現代学校」創出の可能性を、日本、アメリカ、フランスの初等教育の歴史・実際から探ろうとしたものである。多くは新史資料を駆使した研究成果を提出している。学習院大学文学部研究年報第43輯収載「『現代学校』創造の教育実践に関する一考察 『近代教育』との連続性とは何か」にその課題意識と方法論とが端的に示されている。その他、学習院大学文学部研究年報44集「『生活指導』概念の成立に関する一考察」、編著書『新教育学講義』(八千代出版、1995年)、編著書『モラル・エデュケーション : 市民的資質形成のために』(八千代出版、1998年)、共著書『児童の村小学校』(黎明書房、1998年再刊版)などが代表的な研究物である。
2) フランス19世紀における教育の自立について
 「国民悉皆」という意味での「義務」「無償」「世俗」を前提とする「近代教育制度」の成立過程をフランス19世紀に探った研究課題である。ここでいう「自由」とは「自立・自律性」を意味している。各コミューンにおけるキリスト教カトリック教会(司教、修道士会)がコミューンの民衆教育の実際を「支配」していた現実に対し、その「支配」から自立し、民衆の手で教育の実際を運用しようと試みた1871年パリ・コミューンを題材とした課題、ならびに知的障害教育が精神医学の「実験」の一環として行われていた現実に対し、その「支配」から知的障害教育の「自立」過程を題材とした課題との2課題を研究してきた。前者は「La Commune de Paris 1871における近代公教育三原則の成立に関する研究」と題する論文を学習院大学文学部研究年報第48集、第49集で発表した。その後も史資料の収集に努めてきている。後者は、「19世紀初頭における二つのperfectibilitéについての研究序論 ―教育における「文明化」と「文化化」―」に研究課題提示をし(学習院大学文学部研究年報第52輯)、単著『知的障害教育の開拓者セガン〜孤立から社会化への探究』(新日本出版社、2010年)、日本育療学会機関誌『育療』第50号(平成23年3月)「『イディオの教師』の誕生とその意義」など多数の研究成果を公刊した。なお2012年10月末に行われたセガン生誕200周年に関する国際シンポジウム(フランス共和国クラムシーで開催)ではシンポジストとして参加・発表し(指定テーマ「日本におけるエドゥアール・セガン」)、好評を得た。
 これらの2研究課題を統合し,新たに発掘した史料を駆使した(単著)『19世紀フランスにおける教育のための戦い』を幻戯書房から2014年2月に刊行することが決まっている(現在出版社編集中)。
3) その他
 以下の業績がある。
共編著『新生活指導』(2003年、学文社)
共編著『新特別活動』(2005年、学文社) その他」
◎「携帯電話基地局撤去運動」に関わる資料提供の問い合わせが来た。お心に応えたくともそれができないことを申し上げた。ご健闘を祈るのみ。
◎羊さんから葉書が届いた。もうすぐご帰国との知らせ。いっぱい話したいことがあるぞ、と。賑やかになるぞ。
◎ときめきというか胸キュンというか。そんな感覚をほんの瞬時覚えた今日でした。老春なり。