クリスマス・プレゼント

 帰宅した娘がPCに向かってタイピングしているぼくの目の前に、ぬーっと手を出し、「これ。」と黒い包みを見せた。続けて「プレゼント。」 えー、オレ、用意してないよー。椅子と背中の間で何やらがさがさする。チラッと視界に入れてみたら大きな、平たい白い袋。妻が、やはり娘と同じく、「これ。」と言う。ついにぼくは口に出して言う、「ありがとう。でも、オレ、何も用意していないよ。」 妻娘ともども「いいの、いいの。」 では、有難くいただいておきます。妻の大きな袋には、黒い四角い袋、スポンジ入り、が入っていた。何がなんだか分からず、ファスナーを開けて中のスポンジをいじったり引っ張り出そうとした。妻がぼくの手から黒い四角い袋を取り上げた!事態の成り行きが推測できず、おどおどしているところへ、妻はファスナーについていた商品札をはさみで切り落とし、娘は「お父さん、ジーンズを座布団代わりにしちゃだめよ。」とのたまう。なるほど、この大きくて四角くて平坦で黒いものは座布団であったのか。早速、妻のプレゼントを尻に敷いた。
 娘のプレゼントは・・・

 このところ、まじめに執筆をしていると見てくれていたのか。よしよし。しゃれたタイピンゆえ、思わずショーアップを試みた。妻娘、口を揃えて、「失くさないようにね。」 ハイハイ。
 
 クリスマス・プレゼントの「交換」など、我が人生で、いつから闖入するようになったのかをしばし考える。定式化された儀式ならば、いかなぼくとて、忘却の彼方にはやってしまわないはずだ。下娘が結婚をしクリスマス・新年を家族揃ってジャマイカではなく日本で過ごしたときに、「交換」儀式があった。一昨年だったっけ?「お父さん、今日はクリスマスのお食事会だから、プレゼントを用意していったほうがいいよ。」と上娘に言われて、???であったなぁ。トドちゃんに、善へのおもちゃを見繕っていただいたっけ。でも、あれは、ジジから孫へのプレゼント、という意識しかなかったのだが。
 クリスマス・プレゼントといえば、寝ている間に枕元に日常からほしがっているものを忍ばせて置く、もちろん、大人が子どもに、そういうものだと、ぼくの意識には定式化されている。だから、昨夜、妻娘からプレゼントを貰ったのは、不思議で仕方がない。
 来年もそうなのだろうな。