史資料

 ひょっとしたら人のことは言えない事柄かもしれない。確かに、戦前のある学級文集を当事者からお借りし随分と長い間お返ししないままであったということがあるからだ。自省しつつ、やはり大きな義憤を感じざるを得ない問題がある。『童詩教育』という雑誌が発行されていた。1932年33年の頃だ。編集主幹は磯長武雄という先生。その雑誌原本は現在保存先が行方不明。某大学の学生が磯長武雄の遺族から全冊借り出しそのまま返却しないでいるという。昭和30年代のことだ。ぼくより先行する世代の当該史料研究といえば、国語教育史か地方教育史か民間教育史。こうやって探っていけば、借りだしたまま返却しないでいる人物は特定できる。が、史料返却の請求は貸し出した人しかできない。とどのつまり、『童詩教育』原本が陽の目を見る日はないと言っていいだろう。ぼくの手許にあるのはコピー版のコピー版。しかも印字は劣化してきている。