パタパタパタパタ、やーねぇ

 今朝の出勤時。と言っても自主的時差出勤をしているので、たまに、電車の席に座れることがある。
 今日は3席のシルバーシートの連結側に座り、週刊文春を読み耽っていた。
 と、
 嘔吐感を催す程の臭いに続き、爽やかならぬやたら忙しなげな風の連続攻撃が右隣から届く。
 パタパタパタパタ・・・風に煽がれて臭いがこちらに届く。臭いも嫌だが今は風邪症状を持っているぼくだから望まぬ風はもっと要らない。・・・って、あの地獄夏はとっくに過ぎ、秋の爽やかさ時々ほの暑の季節も過ぎ、どちらかというとほとんどの人が冬衣装の雨の今日、座るなり扇子を開いて忙しなげに大きく煽る。品性を感じられないその仕草。ま、確かに脂肪をもっとお燃やしになられた方がいいギラギラご婦人であられましたが。
 「私には風は要りません。」
 週刊文春から目を離さずに、当然、キラキラ着飾りギラギラ脂肪バタバタ扇子婦人に届くように、ささやく、いや、普通の声でしゃべりました。婦人、キッ。睨みつけた恐ろしい眼力を右の頬に感じましたが、こちらは素知らぬ顔。
 キラキラギラギラバタバタ女は、扇子をフンと閉じ、忌々しげにバッグに仕舞い、ズバッと席を立ち、もう一度今度はしっかりぼくの禿頭に憤怒の視線を浴びせ、ドアの三角地帯に向かいました。でも、それはほんの少しの間だけ。どうやら三角地帯の臨席ご婦人との間で諍いを起こしたようでした。補聴器を補填すれば臨席ご婦人のきっとこんなつぶやきが聞こえたはずです。「私の席にお尻が突き出てくるから押し返してやったわ。」
 くだんのご婦人が三角地帯からいなくなってやっと臭いが消え、ぼくは週刊文春の記事に専心することができるようになった次第。