さしずめブルネヴィユ版か

 初めて外国文献に触れたのは大学1年生の時。ペスタロッチを原書で読もうと一念発起し、先輩などから「玉川大学から彼の選集が復刻されており入手できるよ」と教わりいそいそと出かけた。それは今も手垢に汚れて書架に収まっている。それを用いる長尾十三二先生の原書講読ゼミに参加させていただいたのは3年生の時だったろうか。もちろん落ちこぼれだったが、「コッタ版」という言葉が耳にこびりついている。ペスタロッチの作品の編集者によって多く手が入れられている。コッタ版もその一つ。それで、原書講読というのはそういった各編集版を照合しつつ、ペスタロッチの記述すなわち思想の正確な把握に努めるのが、重要な研究活動である、と教わった思いがある。ペスタロッチともあればさもありなん。
 されば、我がセガンは?
 セガンの著作(集)は幾人かの手によって編まれてきた。もっともセガンの時代に近い人がブルネヴィル。彼は「第2期白痴の教師の最初の人」と称されている小児科医である。彼が編んだ19世紀末の「特殊教育文庫」シリーズはじつに偉大な業績だと、ぼくは思う。その中に、セガンも収められている。ぼくが確認した限り『教育に関する報告』第2版(1880年)のフランス語翻訳版である。
 その『特殊教育文庫』第3巻に、セガン『1843年著書』が収められていると、ペリシエとテュエイエとが書いていたので、確認の作業に入った。さしずめブルネヴィル版というところか。『法医学年報』が初出(オリジナル)だが、どう編集(改訂)されているのだろうか。
 ドキドキしながらページをめくるが、それらしい痕跡を見ることができない。うーん。