本来の目的はコンサート

 自主ゼミメンバーが加わっている音楽部(オーケストラ)の演奏会のチケットを2枚いただいていたので、姫様をお誘いし、観賞と相成ったのだが…。
  コンサート会場が錦糸町のすみだ・トリフォニホール大ホール(写真は幕間休憩のホール)なので、その前に昼食を済ませようと、丸花へ立ち寄った。姫様には丸花家族との出会いを語ったことがあったので、姫様は昼食をとても楽しみにして下さった。出来ればそっとおいしい蕎麦をいただくだけ、と思っていたのだけれど、小さな店でありお母様が接客をしていることもあって、すぐ露見。かんたんに姫様を丸花家に紹介申し上げ、蕎麦が出るのを待った。いや、何品出たことだろう、かずくん創作料理が次々…と。お昼にして蕎麦フルコース。締めは手打ち蕎麦。絶品でした。ごちそうさまでした。別れ際、親子揃ったところをカメラに。「ブログにアップしますけれどいいですね。」とちゃんとお断りをした上で。お二人ともお元気でとても嬉しく思いました。「二人でゆっくり酒を酌み交わしましょう。」といただいた葉書の文面にどきっとしたのは数ヶ月前。時が流れていることは承知しているけれど、改めて立派な大人になっている姿を目にしっかりと収めて、お別れした。
厨房入り口にて。

昔ながらの蕎麦屋の門口にて。

 コンサートは会場がほぼ満員という盛況。見知った顔と多くすれ違ったが、挨拶を交わしたのは一人のみ、というより、こちらからご挨拶申し上げた方がお一人だけ。身内の大行事のはずだが、しゃりしゃり砂漠の味がした。眠気をこらえるのに必死だった。後ろからはいびきも聞こえていた。が、拍手の場面ではそれぞれがそれぞれなりに心得ておりましたです。コンサートが終わった後のどを潤すために喫茶店へ。喫茶店では今夏のパリ行き(願望予定)の話題に花が咲く。
 「さて、これからどうします?」と姫様。「新電波塔なるもの近き故さの近辺如何なりしか知りたく候」と申し上げ、夏日の中を歩く歩く…。小運河沿いに塔の脚があり、にょきっと天空に向けてそびえ立っておりました。間近では安物カメラに収まりません。
 「これから、どこへ行きます?」「浅草方面がいかがかと存じまする。」「そうしましょう。」てくてくてく・・・。赤穂浪士討ち入り吉良邸近しとの情報や、鶴屋南北の墓、等の情報に接すると、どうしてもぼくの脳内思考は子どもの頃から大好きな江戸時代チャンバラが走り回る。(下:鶴屋南北の墓)

 心は浅草を目指していたが、脚が地下鉄に向かう。本所業平橋駅。「どちらへ行きますか。」「泉岳寺。」突如、脳内から飛び出た、赤穂浪士の最終舞台。泉岳寺詣では1度したきりであるが、映画のあの場面の墓地を感動の心で眺めたことは未だない。何とか実現したい。姫様は、このわがままじいさんの繰り言をきちんと聞き取って下さるありがたいお方である。

 「着いた!・・・でも、以前来た時と違う感じがする。」 境内は既に入山時間が過ぎていた。案内図で抜け道らしきものを見いだし、その細い道をか細い心でまっすぐ、右、左・・と歩き墓地に出た。しかし、「赤穂義士」を弔う墓石群とは思えない日常性が漂う。・・結局あきらめて墓地を出た。
 墓地を出てからいろいろと発見がある。昔懐かしい井戸ポンプ。姫様はハンドルを押し、水が出るのを身をかがめて確かめておられた。(写真は井戸のみ)

 車通りに出て足の向くまま。「この辺り、お寺さんが多いですね。」「パリで言うと、セーヌ川左岸の、聾唖学校近辺がそうだよね。街外れにはこうした、≪人の捨て場≫、がどこにでもあるんだな」そんな会話を交わしながら、お寺さんを覗き込む。法華経関係のお寺さんの門前に一対の狛犬石像があった。「阿吽像ですよね。」「こちらが阿で…こちらが吽で…あれ、どちらも歯を出しているだけだぞ。」いずれにしても滑稽なお顔をした門番さんをパチリ。鶴猫荘日記に関連写真をアップしてあります。

 「さあ、食事、何にします?」「あんまりおなか空いてないな−。」「やっぱりお寿司かな。」ぼくの心は、目白のう月にかたむいていたが・・・。<まあ、なんとシンプルな店構え。暖簾の他には、たけのこ、という看板だけだわ。察するに、高級大衆食堂で京懐石の店、今日の懐石主役は、たけのこ、なんだな。…気になるなぁ・・> 姫様に暖簾をくぐって貰い、入店可能かどうかを聞いて貰った。「本来は、予約だけの店だけど、大丈夫ですって。」 よし、決まりだな。

 あれこれ撮影するのは大変失礼と思いつつ−事実、姫様に軽いお叱りをいただき続けた−、つい、カメラを構えてしまう。本日のメインたけのこ料理をご覧じろ。

 この店の名、耳に挟んだことがある。たしか、京都では大変な名出張料理店。なに、江戸っ子風に言えば「懐石、出前いたします。」・・・ちょっと、イヤ、大いに違いまんな。ほら、偉い方々のパーティーで、名だたる料理人が料理の腕をふるってみせる、あれですよ。オラには生涯縁がねえべ。という人たちを憐れんでかどうだかは分かりませんが、「気楽に召し上がっていただこうと思いまして。」と、昨年6月、この地に店を構えた、ということでした。いい店見つけた。ちなみに、京都の三友居案内では、「出張茶懐石」とありました。値段は15000円〜、カード不可。げんなまやなかったらあきまへんで〜。京は高おすなぁ。東の店は都落ちってとこで。
 もう、満足満足。品川駅への道を店の人に教わり、てくてくてくてく…。本日、ぼくは、2万歩歩きました。
 姫様と品川駅でお別れし、ひたすら自宅を目指して。途中、姫様からメールをいただいた。
「なんだか、不思議な一日でした・・・。噂の和さんにお目にかかり、タワーを見上げ、墓を探し、たけのこを食べ、食べつくし、本来のコンサート以上の印象でした。..」 ぼくからは何も付け加える必要はない。  バタンキュー。