せわしない日

 いつもは訪問客などいない研究室にも、たまには、学生たちが状況報告やら相談やらを持ち込んでくる。「先生の授業の単位、絶対に落としません!答案にハートマークいっぱい書いちゃいます。」などと言うお嬢さんに始まり、就活で忙しく動き回っているけれど、「女性であること、帰国子女であることがネックみたいです、でも、私自身も自身の可能性を広げて、またチャレンジします。」とけなげに語ってくれるお嬢さん、「ある私立の教員募集に応募しようと思います。自己推薦書を書いたのでチェックをして下さい。」という君等々。ハートマークのお嬢さんには「ハートがほら、稲妻印で割かれる絵があるでしょ、それを描いて答案をお返ししなきゃね。」とジョークで返し、就活のお嬢さんには「なんだかんだと言って日本的共同体の論理から外れることができない多くの企業があなた方のような人を嘆かせているようですね。でも、今、そういう論理ではなく、大きくはないけれど、まさに能力を必要とするクリエイティブな会社が登場してきていますし、地場産業などにも可能性が強くあるようですから、あなたの能力をあなた自身で捉え直すことをしてご覧なさいな。」てな語りをしたり、教師志望の君には、「生徒に対してこんな教師でありたいという希望が語られていることはいいんだけれど、志望する学校自体が求めている教師像に君自身がどうコミットしたいのか、できるのか、その点が見えにくいから、そこを書き表した方がいいね。」とかの添削をした。
 まあ、オレって、お節介なんだな―、としみじみ思う、後の祭りだけど。ふんふん、にっこりと対応していればいいのにねぇ。ただ、自己推薦書の君は、「先生はばんばん学生を責めて一方的に喋っているという風評があるけど、先生ほど、人の語りに耳を傾け、人がどう動きたいかをよく見ている方はおられません。」とありがたい評価をしてくれた。「そう努力しようと思ってますけどね―、やっぱりぼくは、人の語りを聞かないし、見てもいないというのが実態でしょう。」と応えた。
 そうした学生対応の間を縫って、午後4時過ぎから、来週の出張のための飛行機と宿のチケット購入に、池袋の東武観光に走る。アルバイトが終わったおねえさんにだだをこねて、ぼくの耳のアシスト役をお願いした。ありがたいこと。
 夜7時過ぎから三木で、久しぶりに姫様と会食。新しく編集をなさった本をいただいた。柔らかい文体。しかし繊細。最近ぼくは、荒々しい文体や「常識的な日本語」への回帰のエッセイを読みふけっているから、いただいた御本はとても新鮮に感じる。
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 今日は6時から自主ゼミ、本谷宇一先生をお迎えして、教育実践を語っていただく。