いったいどうなってるのだろう

 ぼく自身、紳士ではない。こちこちのモラリストでもない。だが、他者を不快にさせてはならないと思うほどには社会性があるつもりだ。相手が頭を下げない限りこちらも下げない、というほどに「上から目線」で生きているわけでもない。朝夕の挨拶は、比較的、礼儀正しくする方だろうと思う。
 こうやって書いていると、頭に、面白い光景が浮かんでくる。話題二つ。
 ぼくより5メートルほど先にネクタイを締めた紳士(もどき?)が歩いている。彼には敬礼が送られる。が、彼は何もなかったかのように通り過ぎる。それに続いてぼく。「おはようございます。」と、相手に顔を向け、声に出して、挨拶を送る。しかし、先ほど紳士(もどき)に敬礼した主は、ぼくに敬礼を送ることもないし、返礼もない。ギロリとにらんでいる、と言ったらよいだろう。顔馴染みだと思っているのはぼくの方だけなのだろうな。相手は、小汚い爺め、と卑しみ、怪しんでいるのかしらね。事実、小汚い爺、なんだけど。それがなにか?
 これは常態ではない。しかし、決して希有な光景ではない。こういう日常社会に生きているのだから、若者たちの非礼振りを責めることはできないのだろう、と思いはする。しかし、きちんと言うべきは言わないと、若者たちは「変わる」きっかけを持ちえないだろう。
 今日、教育基礎最後の授業が終わった直後、教壇の所に男子学生が近寄ってきた。「試験はどこでいつやるんッスか」 例のスカスカ言語だ。で、彼の姿を確かめると、両手をズボンのポケットに突っ込んで言っている。韓国の男性も女性も、大方が、ズボンのポケットに両手を突っ込んだまま歩き、会話している姿をこの冬、目に留めたから、韓流だなんだかんだと騒いでいる我が国は、風俗もあの光景に染まりつつあるのかいと、目の前の学生をじっと見つめ、それから、「手をポケットから出してしゃべろっ!」と怒鳴りつけた。三度。怒鳴られている意味が分からないらしいから、「ここは日本。ここ日本では、まだまだ非礼にあたる。そういう態度を取ってコミュニケーションを結ぶ輩を相手にするつもりはない」と<丁寧に>説教をすると、両手をズボンから出し、「生徒指導的直立不動」の姿勢を取った。こういうことしか、我が国は、若者に教えてないの?
 腹が立って収まらないし、彼の質問に答える必要もないので、「オレには分からん。掲示されているだろう。」と言葉を残して教室から出た次第。