二つの「ヴィクトール」像

 イタールによる「ヴィクトール」に対する教育実践の第一報告書は1801年に出版された。そして、それをイタール自身が英語に翻訳しロンドンで1802年に出版した。ぼくは第一報告書(フランス語版)を所有しているが、その英語版は存在することは知っていても見たこともない。比較言語学的な興味が強ければロンドンに渡ってでも英語版を読んだであろうが、実践の事実だけに興味を持っているぼくとしてはフランス語版だけで十分だと思っていた。いや、今でもその意味では、十分だと思っている。
 だが、フランス語版と英語版との、それぞれの扉ページに添えられている「ヴィクトールの肖像画」に違いがあるなどとは考えてもいなかったが、違いがある事実―それがわずかであろうとも―を知った今、英語版を手に取ってみたいという欲求に駆られている。次を見比べていただきたい。

 どちらがどちらでしょうか。