上海蟹

 数日前、上海蟹が「上陸した」というご案内が届いていた。オーついに来たか、と喜んだバカ鶴は、貴婦人に、上海蟹リベンジのお供をしていただくようお願いした。昨年もこの時期に上海蟹を食べに横浜中華街に勇んで出かけたはいいが、不味い、客あしらいが最低、高いという極悪不運に見舞われたので、今年は絶対そういう失敗をしないぞと心に決めて、横浜中華街に出かけた。イヤ、すごい人出。中華民国旗の小旗が配られていたから、人びとの手にも賑やかに、旗が握られている。人びとの間を縫って蟹の店をあれこれと物色するわけだから、疲れました。もうどの店でもいいや、というバカ鶴に対して、貴婦人は、立派な会社のOL勤め経験を一つの頼みにし(何せ、「○年手帳」などをお持ちでしたぞ)、店探しをして下さいました。大きな通りは確かに店構えが大きいから目を引くが、昨年もその手で騙された。今年は、人通りが極端に少なくなる小道に入り込み、あれこれと店を漁る。店先に品のいいおばさまがいらっしゃると、「蟹あります?老酒漬けの。」などと聞き込みをし、意を決して一つの店に飛び込みました。小さな店。せせこましい空間に4人掛けテーブルが5卓。さっそく、「上海蟹コース」の注文です。8年ものの老酒などを勧められて「残りは持って帰っていいって」と貴婦人。乾杯!

 さあ、いよいよ上海蟹コースです。目当ての蟹だけを写真アップ。前菜もその他も、とにかく、「美味しいねぇ。」の言葉の繰り返し。「リベンジはなりましたね。」「来年もこの店にしましょう。」もう来年の話で盛り上がりました。

 これは老酒漬け。そのほか、蒸し蟹、煮蟹。スープにもサラダにも蟹はたくさん入っておりました。えっと、店の名前は…

 このあと、国慶節のお祭りの余韻などを街中で楽しみ、「赤煉瓦、まだ行ったことがないの。」とおっしゃる貴婦人をご案内して、港岸壁沿いをそぞろ歩き。大道芸人の素晴らしい技にしばし足を取られましたが、陽が傾き始めていたので、慌てて赤煉瓦へ。途中で、船上結婚式などで眼を、時間がないというのに、安らげました。

 赤煉瓦の表側はビール広場。真っ黒の人群れ、しかも行列。当然ここはパス。「裏側が面白いかもしれないわ。」と、見たことのない世界へと心が誘われた貴婦人を先頭に、「裏手」に回りました。裏側は回廊になっており、テラス式のカフェテーブルが出ていたり、おっちゃん兄ちゃんたちのモクの場になっていたりでしたが、こんな光景を眼にすると、自然眼はほそまり、足は止まり、目で追うのであります。なにを?・・・ご覧あれ。

 そして、

 さあ、帰りましょう。もう陽が沈む10月。すぐに真っ暗になります。
 赤煉瓦の壁に月が出ています。西の空が都会を巻き込んで燃えています。