ある日のビセートル病院訪問日記

★HPタイトル写真をビセートル病院の中庭に変更。狂人が遊ぶ庭と今日の庭。過去と現代とが交錯する幻影に仕立てた。http://eseguin.web.fc2.com/
 これに関するある日の日記より…
 ・・・ガール・ドストリッツから5号線でプラス・ディタリー、続いて7号線でル・クレムラン−ビセートル下車。ビセートル病院(旧ビセートル救済院)の訪問である。
 以前とは違った構内散策を試み、いろいろの発見があったのはおもしろいことであった。しかし、肝心のブルヌビル病棟近辺は大工事中で容易には近づけない。行ったり来たり思案をしながら構内地図を眺めているところへ、「どこに行きたいのか」との声かけが、散策中の老紳士からなされた。地図を示しながら、ブルヌヴィル病棟(小児病棟)の学校を訪問したい、と、私はフランス語の会話ができませんと英語で断りながら応えると、地図内の道−それは救急患者の搬入、死者の搬出等のための建物への道―を指でなぞりながら、イシー・・・・イシー・・・・(ここを・・・・ここを・・・)と教えてくれた。
 ブルヌヴィル棟へようようのことで行きあたったが、以前に訪問した時とは違った道だったので、新しい発見があったのはありがたい。児童病棟であるところから、当然のこと、両親のための施設が整えられていることを見いだしたのは、ことのほかうれしい。二人の子どもを長期入院させた経験からすれば、日本の病院は子どもの親に対して「目こぼし」程度で子どもの看護を認めているに過ぎない。同一病棟(せめて病院内宿泊施設)で親と子が生活できることは、親にとっても、子どもにとっても、精神的に安心感を得られるのだし、それが何よりも治療効果があることは言うまでもないのだ。
 目的の病院内学校(エコール)の外観だけでも訪問したいと思っていたことは、果たせなかった。というのも、工事中のカーテンが下ろされていたからだ。隙間からのぞき見たところでは、以前の訪問と変わらず、やはり「学校」であった。しかし、きわめて小さな空間なので、どのぐらいの人数が通い、どのような内容が教育されているのかは、想像することさえできなかった。
 古い絵はがきで見た「狂人を収容する建物と前庭」にそっくりな一画に行きあたる(HP扉写真))。庭を歩き、回廊を、各部屋の覗き窓から覗きながら、歩いた。もちろん、現在は、別の目的で使用されている。しかし、歴史を容易に回想することができる「遺跡」を残し続けてほしいものだと、あちこちの建物が工事によってまったく以前とは様子の異なった建物外観になっているものを見せられるにつけ、強く願った。2時間有余の訪問。
 来夏は是非訪問したい。