「わび」と「さび」

jittyan2011-12-24

 学園の西門の所に、緑がある。「タヌキが出没した」という噂が立ったところだ。かつて文学部棟入り口近辺で「タヌキ」とおぼしき動物と鉢合わせをしたことがあるが、本当のところは「アライグマ」。ちょっとした林となっているが、その外れで「わび」の世界を見た。もう年の暮れだというのに、秋の暮れの風情。ちょい、落語のご隠居さん風に。
 「わびってくりゃ、さびってこなきゃあいけねーなぁ。どっかにさびはねーかねぇ。」
 「わび」の世界に背を押されたご隠居さん、近所の「う月」の暖簾をくぐった。
 「こんばんは.ちょい、お邪魔させてもらうよ。」
 「あれ、ご隠居、今日はお一人で?」
 「ここんとこ、今日も一人なんだな。」
 「そりゃあ、さびしいねぇ。」
 「ってとこで、うんとさび効かしてにぎっとくれ。まずは煮もの三貫と白身魚三貫」

 「んーん、効いたねぇ。涙が出るよ。」
 「それってさ、ご隠居、相方がいねえさびしさの涙じゃないのかい。」
 「言うねぇ、板さん。たしかにね、あっちのテーブルもこっちのカウンターも、お二人さんばかりだ。世間じゃ、クリスマスイブを一緒に過ごす相方がいねえ奴ぁ、死んだも同然、って言うじゃねえか。」
 「こちとら、そういうお二人さんに、うんとこさ、召し上がっていただいて、正月を左うちわで迎えてぇでがすな。」

 「ホタテの醤油焼き。ワタ付けてね、苦み走ったいい男になるんだから。」
 「今更遅いって、ご隠居。諦めな、今日は。」
 「一句できた。クリスマス侘寂ばかりの爺や爺」