古き良きもの

 朝、初夏を整理していたら、奥から手作りの冊子が顔を出した。『海を架ける草の根の教育運動 Whole Languageと生活綴方』(10日間familyの旅)。1990年8月上旬、アメリカ、ミズーリ州セントルイスで開催された第1回Whole Language Umbrella参加者文集である。目次から…
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日本の生活綴方と英語圏のWhole Language Movementの国際交流  志摩陽伍
アメリカ出会いの旅10日間  岩谷啓
自分自身を見つめて生活を書かせるということは  汐待和子
Whole Language and Seikatsu TsuzuriKata  Kothy O'Brien
Whole Language Umbrella国際大会を終えて  渡辺容子
女の子との出会い  佐藤淑子
10日間ファミリーの旅  丹羽徳子
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 その他、我が家族の手記。上娘は「今度こそは英語の授業を一生懸命に」、下娘は「アメリカに行って」。細君は「読み聞かせ ストーリーテリング」 ぼくは書いていない。「書くことがなかった」というのだったか、頭が飽和状態でかけなかったのか、多分後者であったと思う。その証拠に、What's Whole in Whole Language?の翻訳を手がけていたのだから。
 この時の「仲間」に、既に物故者がいる。彼女の、教育に対する燃えるような情熱を、旅の空で強く感じた。今という時代、その先生のような情熱を実践として形にすることが非常に困難。強い管理に覆われつくして、蟻ほどの熱意さえ這うことが許されないが如きだ。
 教育は死んだか?果たして教育は死んだか?
 つぶやきながら冊子を食い入るように読んだ。
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 羊さんが台湾旅行から帰国したと、手土産を持って研究室を訪ねてきた。凜とした美しさ、肌のなめらかさにちょっと見惚れていたら、羊さんがお母さんが秋田のご出身だという。「へえ、どうりで、美しく肌もきめが細かいんだ。」と率直な感想を述べた。(「セクハラになるのかな?」と心を曇らせたのは後刻のこと。相変わらずオレは鈍いな。)羊さんが話をさらに深めてくれる。「もうすぐ25になるけど、みんなにお肌の曲がり角だよ、と脅かされるの。それでお母さんに、お母さんのお肌の曲がり角はいつだった?と聞いたら、あら、私はまだ曲がってないよって。それで母の母、つまり秋田のおばあさんね、今年77になるんだけど、お肌の曲がり角はいつだった?って尋ねたら、ほんの数年前だったよ、って。」 イヤー、2人で大笑い。こういう明るいご家庭で育ったんだな。つくづく感心させられた。