歌集 青白き光

 今日の教育実習I終了時、M君か、差し上げます、と言って標題の冊子を手渡してくれた。M君は昨年末の原発事故被災者。昨年度の授業で教材として投げ込んだエッセイ「ぼくには帰る故郷がない」に强く共感して、被災者であることを「カミングアウト」した。今年度前期の道徳教育の研究では、グループで自身の被災経験をモチーフとしたシナリオを書き、演じた。賞賛の拍手が鳴り止まないというのは、あのことを言うのだろう。
 作者は農民家人。政策によって殺されていく日本の農の証人は同時に、原発の犯罪性を本質的に捉えている。3・11をきっかけとした「今成り」なのではない。「わが町は稲あり魚あり果樹多し雪は降らねどああ原発がある」頻発する原発事故が隠され、原因不明で命を失う人があるなどなど、これらを告発してもその声はおおやけにならず。3・11より遥か前から、農民歌人は反原発を主張して来たのだ。「農などは継がずともよし原発事故続くこの町去れと子に言ふ」。まさに「帰る故郷はない」。
しっかりと読み味わいたい。