ドーデーを読み始める
ドーデ−というのは、かの『最後の授業』の作家。ぼくなど感動しながら読んだ作品だけれど、歴史舞台から作品を眺めると虚偽に満ちているとかで、今では学校の教科書に収載されなくなったようだ。
逐語読みを始めた作品は『ベル・ニヴェルネ号〜ある古い舟と船乗りの物語』。「筏」「筏師」にかかわる作品だと小倉孝誠『パリとセーヌ川 橋と水辺の物語』(中公新書)で評価されているので、喜び勇んで原文を入手したものである。だが、ざっと斜め読みしたところ、確かに、「筏」も「筏師」も「クラムシー」も登場するが、「ベル・ニヴェルネ号」は「筏」ではなく「古い木造船」だし、それに乗る「船乗り」は「筏師」ではない。はてさて、ドーデ−は?小倉は?という疑問を持ったが最後、原文に当たるしか他あるまい、と思い立ち、逐語訳となった次第。これがなかなかなもの、ぼくのような素人フランス語学習者では「本当のところ」まで行き着くのは大変な思いをするだろうと、予感がする。
書き出しは、「タンプル街区、アンファン=ルージュ通り。」である。「路地裏の狭い道はまるで下水道のようで、表通りからはき出された汚水がどんよりと流れ、悪臭が漂う。その路地裏通りに並び立つ建物は、兵舎のような曇りガラス窓の高級住宅であったり、日雇い農民や職人の宿舎、その日暮らしの労働者の泊まり処であったり、夜の宿であったりする。」・・・・ナポレオン三世による大改造以前のパリ中心街の混濁した光景が描かれているようだ。
さて、この先はどうなるのだろう。物語の始めの章(第一章)は「出会い頭」というタイトルとなっている。