新しい写真資料

 クラムシー歴史文化博物館(ロマン・ロラン記念館)に立ち寄ったのは2011年8月のこと。クラムシー入りは何度もしているが、ここに寄ったことはなかったのだが、翌年2012年8月に予定されていた「セガン研究の足跡を辿る旅」で立ち寄るポイントの一つであったので、あらかじめ館員の対応をも含めて内部をきちんと調べておこうと思いたったからであった。
 館員の応対はペケ。例示:「筏師」の肖像ポスターが貼ってあり売値がついていたので、「サ・シルブプレ」(これください)とやったところ丸められて包装されたポスターを、机の引き出しから出し、投げて!よこした。パリの宿に戻って開けてみたところ、欲しくもないロマン・ロランの肖像ポスターだった!!という具合。他にもいろいろありましたけれどね。そういった旅の空での恨みつらみは星屑の数ほどありますが、まあそれは、ぼくにコミュニケーション能力という基本中の基本教養がないからであるので、書けば書くほど恥をさらすことになってしまう。・・・話を今日のブログ主題につなげます。
 カウンターに写真絵はがきが商品として置かれていた。いくつかのジャンル(主題)があったが、Le Flottage en Morvan(モルヴァンの筏流し)というジャンルのものを4葉購入した。「ここクラムシーの筏流しってテーマのはないのかねぇ。」等と内心でくだを巻いたが、外言する能力が無いので、謎の東洋人そのままの笑みを浮かべて、姉ちゃん、これらチョーダイ、と購入した。次はそのうちの一葉。

 はがき切手面にChargement d'une péniche à Clamecy (「クラムシーでの川船の積荷」)とある。おお!川船!ケド筏やないね−、というつぶやきが出るがまあとりあえずこのところのぼくの調査課題には適う資料だ。写真を撮った人はViloinという人のようだが、今のところ不明。いつ頃の作品なのかも書かれていない。文字情報からはそれ以上探れない。「川船に荷を積むところ」と意味するタイトルだとしたら、その荷とは、両岸に幾重にも積まれている<何か>であろう。写真をじっくり見る。積まれているものは木材の束。長さは1本が1メートル強というところか。だとすれば薪材であろう。すると、この川船は薪材を積んで運航する、ということだ。にもかかわらず、写真ジャンルにある「筏流し」とはどういうことなのだ?考えられることは、川船は薪材を、あるところAからあるところBまで運ぶ役割を果たすため、ということ。陸の上に積まれている薪材の幾筋もの山は「あるところから来た」のか「あるところへ行く」のか。そのあたりはこれだけの資料では不明。今後の検討が必要だろう。セガンの創作文学「筏師たち」(1841年、拙訳: http://eseguin.web.fc2.com/pdf/shiori02-0.pdf )などを丁寧に分析的に読む必要があるように思う。今のところ、筏をヨンヌ川に浮かべて運行を出発させるために、筏の材料である薪材を筏の製作現場まで運ばなければならない。セガンが描いているような、ヨンヌ川の自然の流れに任せて薪材を運び鈎で陸上に引き上げ積み上げておく方法以外に、モルヴァンの奥地から自然の流れで薪材を運び、続いて開削した運河に流し、さらに運河の両岸に薪材を積み上げ、そこから筏製作現場まで川船で運ぶという方法が考えられる。写真の「川」は間違いなく運河であり、それも、ニヴェルネ運河だろう。
 さて、写真はあと一つ興味深い光景を写している。それは川船の先端に「曳舟」が見られることである。馬が一頭いるが、この馬一頭で川船を曳くことは困難だろう。
〇今夜はメジロのホテル・メッツに宿泊。