「きこり」考のために (2)

 Boisierは森の放浪者(季節労働者)である。
 「森の人たち」とモルビアン人は言う。(モルビアンとはフランス北西部の県名) 彼らは気性が荒いと見なされている。彼らは農民と深い関わりがある。つまり農民は、森の人たちが農民の穀物や家畜をこっそりと盗ると、しばしば訴えるのである。まるで魔女か狼男かのように。・・つまり、実際に彼らは、隠れた財宝に、(つまり)女火星人に、木の墓廟彫刻の泣き像に、オオカミの群れのリーダーに、アルブル・パーラン(Arbres Parlants、<話す巨木>)に会ったと言い張るのだ。これらはみんな、農民の間の伝承話が無意識の中に育てた、「住居」の固定観念のなせる技である。畑荒らしの罰を受けないことの保証のためなのだろうか?
 Boisierは木こり(Bûcheron)を含む。木こりは、刈り取り、束ね、縄で結わえて、薪束にする。―木材を斧で割る薪職人(Fendeur)。―船用の板や家屋骨格を用意する角材切り出し職人(Equarriseur)。―材木を縦にのこ引きする職人(Scieur de long)。―木を炭にする炭焼きの準備をする職人(Leveur)。―竈を用意する竈職人(Dresseur)。―最後に、炭のゆっくりとした生産工程に、昼夜分かたず火の加減を調整する炭焼き職人(Charbonnier)。
 彼らの暮らしぶりは苛酷である。毎冬、「ブナ」の木枝(perche)を骨組みとし、生乾きの木の葉と苔、土塊とで造っては壊す「巣(きこり部屋)」を住まいとしている。「巣」は、敷床として平たい石が一つ、窓として木枝を組み合わせて造った可動板を備えているだけである。その可動板は出入り口を兼ねている。このような孤立生活は暖かい季節の間だけである。面白い歌がたくさん歌われている。彼等の歌声は陽気に、燃え上がる乾いた枝のはじける火花や、採炭の青白くどことなく哀れを誘う火花と調和している。それらは、ほとんど宗教的に、けっして音がないわけではないけれど、しんと静まりかえった森の中で、聞こえる。この人間性溢れる歌声は、いなくなってしまった鳥の声を聞いているかのようであり、木々がざわめきを止め、森が耳を傾け、物思いに耽るようである。