毘沙門天(待乳山聖天)へのお参り

 神仏のたぐいをあてにしないで生きているこの馬鹿鶴が、今日ばかりは神仏に手を合わせこの混濁した世の中の浄化を求める気が強く湧いた。
 お昼を久しぶりにトドちゃんと紙ふうせんもんじゃ焼きをいただいた。修学旅行生でお店は大盛況。でも、彼らは最低限しかお金を投じないから、お店にとっては非常に忙しい→頭数の割には・・・であったろうと思う。
 入店案内をいただく前、二人組のご婦人が店から出てくるなり、鶴とトドに向かって「ここ、本当においしいのよ。もんじゃって馬鹿にしていたけど、いや、おいしいのよ。」とのたまわれた。トドちゃん返して曰く、「私たちこのお店の常連。で、店の中に、この人の撮ったパリの写真が飾ってあるのよ。」 俄然興味を示されたので、鶴は「どちらからいらしたのですか?」と訊ねたら、「大阪」との返事。「んなら、大阪弁でいきまひょか。」と言うと、目をまん丸にしておられた。しばらく大阪弁で交流し、お別れし、ぼくたちは店内へ。注文は「今日はこの後仕事をしますのでドリンクはコーラ。後はいつもの」と注文。ほんにおいしゅうござんした。
 そうだ、ここのところ、トドちゃん、心がお疲れのようなので、内緒にビッグプレゼントをしようと思い立ち、お店に、人力車観光「花鳥風月」に連絡を入れて貰い、トドちゃんに提案。「お仕事は?」「時間と場所は拘束されていないので大丈夫。」「それじゃあ・・・。」会計を済ませている時に「花鳥風月」の車夫(経営者兼)がドアの向こうに姿を見せたので、トドちゃんの目を盗んで外に出、「パワースポットコースをお願いしますね。このことは連れ合い、トドちゃんと言いますけれど、内緒です。」 そうそう、車夫さん、出発前に、こんなことを申されました。「前回ご案内しましたのは3月12日でした。ちょっと寒い日でしたね。先生から「添田知道」のことをお教えいただきました。ありがとうございました。」 添田知道は日本のペスタロッチだと、「歴史コース」の際にお教えしたのだった。いやな客だよね―、おれって。
 
 人力車は快適に浅草を走る。隅田川沿いの桜並木のご説明が入る。「思ったより目線が高くなるのね―。」感嘆の声を上げながらトドちゃんは説明の言葉と光景とを照らし合わせる。なぜ桜の木が植えられているのか、誰の時にそうなったのか、など。続いて梅の林を右手に見る。地名は言問橋。ああ官公だ。で、馬鹿鶴は「句」という車夫の言葉に茶々を入れる。どこかの誰かもそうだったなあ。車夫はどこかの誰かより遙かに人間ができていると強く思った。で、また、今日も、おれはいやな客になってしまいました。すこぶる付きの反省。
 人力車は毘沙門天待乳山聖天)に止まる。ここで車を降りて境内へ。

 普段はまったく気にもしない参拝作法を教わる。「この門の下をくぐる時には右足から大きくまたぐようにしてください。」「そういえば、家の敷居は踏むものじゃない、としつけられましたっけねぇ。考えは同じですね。」「そうです。さすが先生。」手を清め(手水)、身体を清め(お線香の煙に燻す.決してどこか悪いところを直す行為なのではない)、参内。・・・少しずつ、心が落ち着き、集中力が出てくるのを感じる。大根が多く備えられているが、「大根役者」の語源となる光景なのだそうだ。「私は大根教授であり続けましたなぁ。」心底そう思わされた。