ここはどこだろう

自宅から救急車で運び込まれてから、カーテンと壁に囲われた病室と、リハビリテーション、いくつかの検査室、そしてストレッチャーや車椅子で運ばれる廊下、トイレがぼくの外界。だから視界に入るのは天井、病室と、患者をコアとした人たち。認知検査を受けたとき、今何月何日何曜日か、とか、あなたがいるところはなんというところですか、などの質問を受けたときは、困った。カレンダーがベッド周辺にないから分からない。病院名は教えられていないから知るわけはない。ビセートルに昔あった「黒い監獄」のような自己認識環境だ。問いにたいして「わかりません」と答えたら認知障害と診断されかねないと判断し、時を判断すべきツールが視界内にないので正確には分からないが、ここに運びこまれた日から夜の回数を計算して…、とか、病院名は家族からもどなたからも告げられておらず不明だが、壁に張られているポスターから類推すると…、とかの回答をした。「今は平成何年ですか」の質問には、西暦使用主義で暮らしているので正確にはわからない、と答えたら相手は苦
笑いをしていた。
さて、本当にここはどこだろう。病院名ではなくて土地柄。我が家からは歩いて40分程らしい。柏駅からもほぼ同じらしい。先日は鉄塔のはるか向こうに富士の高嶺を望むことができた。昨日は真っ赤な夕陽が燃えていた。手前はなだらかな給料となっており、住宅がびっしりと並びたつ。
今朝は東側を垣間見の機会をえた。柔らかな朝日を浴びて雑木林が横に続く。ひょっとして野馬堤跡だろうか。手前には農地が残っている。
健康体ならばさ迷い歩きたいところのようだ。