教訓にしよう

 私は、他人の考えを書くのではなく、私の考えを書くのだ。私は他の人々と同じ見方をしないし、この点はずっと以前から非難されてきた。しかし、他の人の眼で見、他の人の考えで書くのは、私にできることであろうか。できないことだ。私にできるのは、私の意見に固執しないこと、私一人が他の誰よりも賢明であると思い込まないことであり、さらには、私の考えを変えるのではなく、私の考えに疑いを抱くことである。これこそ、私のなしうること、私のなすことのすべてである。
 (ジャン・ジャック・ルソー『エミール』序文より。白水社ルソー選集による)