探求心はどうして育つか

 毎日新聞13版、11面(くらしナビ面)「肉はどこから いのちと向き合う 中」の見出しタイトルは「タブー越え『知りたい』」。屠畜を主題にしたドキュメンタリー映画「にくのひと」(2007年)に取材した記事である。作成者は大阪芸術大学の学生。牛丼チェーン店でアルバイトをした時「この肉はどうやってできたんだろう」という疑問が芽生えたことによって、映画作成へとつながっていったということだ。
 新聞のタイトルにある「タブー」というのは、部落差別に関わること。牛馬が食肉の対象として一般化されるようになったのは「文明開化」による、と教えられてきた。ぼくの子どもの頃に牛肉を使った丼物を「開花丼」と言っていたことに象徴されるだろう。しかし、牛馬は、皮革工芸品としては原始の昔からあったことは、歴史で教えられた。確か中1の時だ。で、ぼくは先生に質問をする、赤面症で吃音であったにもかかわらず、だ。どうしても黙っておられなかったのだろう。「牛や豚は四つ足といって汚らわしいと言うけど、武具や服やいろんなものの材料であったわけでしょ?汚らわしいのなら、どうして、そういう材料に使うのでしょうか?」 それともう一つ。「牛や豚の皮を剥いだら、肉や骨やいろんなものが残るけど、そうしたものはどうしたのですか?」 先生から返ってきたことばは、「そういうことを知りたがって、ええかっこしたいか?」であった。こういう教師の下で育てば、「にくのひと」の作者のような問いの発展にはつながりっこないと、つくづく思うのである。