ひつまぶし紀行

 今日も暑い日中。電車もサテンも冷房を入れていた。ぼくにとっては迷惑・不快な冷房だ。
 日中、貴婦人トドちゃんにおつきあいいただいた。秋葉原に出てひつまぶしを昼食に。久しぶりのこと。まさにお昼時とあって、食卓はほぼ満席。隣の食卓は男の親子らしき3人づれ。無言で携帯をそれぞれいじっているのが異様な光景。ほかに携帯をいじっている客が居なかったから余計に不快さを覚えた。初老の父親らしきものから率先しているのだから、なにをか言わんや。
 「おなかいっぱーい」と叫んで店を出たトド鶴の、次に向かう先は、パリで用を足す電化製品の品定め。電気街(エレクトリック・タウン!)でトランスをいくつか手にする。たくさんの用途に応えたいと思えば思うほど、トランスの重量は増す。定住するわけじゃないし、などと内言し、あまりの重さに購入を断念。続いて炊飯器を探す。「いつもバッグを買うお店にあるんじゃないかしら」と、トドちゃんの発案は見事に的中。成田空港で見た炊飯器値段の半額から幾種類もあった。「ここにあることが分かりましたから、今度買いに来ます。」
 続いて、ぼくの靴の購入。トドちゃんはアメ横靴屋をすでにインプットしておられたこともあり、アメ横に向かって春の暑い陽気の中をそぞろ歩き。ゲームソフトの店はトドちゃんが、中古カメラの店は鶴が・・・。鶴がきわめて不快な声を出したのはメード服姿のチラシ配りの群れの中を歩かざるを得なかった時。あれに心引かれる人が数多くいるからああいう「広告」が成り立つのだろうかと思うと、余計に腹が立った。なぜだかは分からないが。きっと、「鶴ピンだけ、チラシもらえなかったね。」とのトドちゃんのお声に正解が込められているのだろうな。
 小さな店構えの靴屋の店先で、客だろう、黒人が女性店員になにやら注文をつけていた。それに興味引かれて店の中へ。革靴とスニーカーとをほしいとトドちゃんに告げていたのだが、その店は、入ってみると革靴だけが展示されていた。
 靴のサイズを聞いてくれたトドちゃんが、商札にウオーキングと書かれている靴を選んでくださった。履いてみるとぴったり。そういう調子で2足を買う。あまりの早業にトドちゃん、あきれ果てていたけれど、直観の教育的意義を研究し続けて40余年のぼくとしては、直観以外に自身の好みを決定するほどの品格を持ち合わせていないわけである。
 靴屋の後は上野界隈目指して歩く。トドちゃんの後輩が勤めたという銀行・証券会社のビル敷地の片隅に、新たな「史跡」を発見した。看板の上にコーヒーカップが乗っかっていた。我が国初の喫茶店だそうだ。とはいうものの、遊技場も更衣室も備えた本格的な「サロン」である。明治中期のことである。コーヒー一杯がもりそばのほぼ倍額であったようだ。
 「うさぎや」でどら焼きなどを手土産品として購入。風月堂でしばし体を休め、御徒町駅でお別れした。
 夕刻からは「教育実習行ってらっしゃい夕食会」。