フォンティーヌ

 せっかくの40日間のパリ生活。文献資料探しばかりが能ではない。かといって美術館など人が目的的に集まるところにはほとんど興味を持たない。いや、中世史博物館は例外か。
 ぼくがこだわりを持ち続けているのはパリという都市作りの思想とその小道具。大がかりなもので言えば、運河などもその一つだし、是非運河下りをしてみたい(セーヌ川遊覧は絶対にしたくない)。もちろん「小物」の発見のための散策も素敵だ。
 昨年秋のこと。新オペラ座近辺(バスティーユ近辺)の街をぶらりと歩いていた。
 「なんだこれ、きたねーなー。この水、飲めるのかよ―。」 

 思わずつぶやいたフォンティーヌ(泉)。語感と実感との違いの典型例だと思ってしまう。まてよ、歴史標識があるぞ。

 フランス語が堪能だとふむふむ、なるほど、となるのだが、こちとらそうはいかねェ文盲者。帰ってからゆっくりと辞書で調べよう、そのために写真を撮っておこう、というわけの写真。未だに辞書を広げて読んではいないので、よく、いや、まったく分かりません。シャロンヌあるいはトローヌ泉は1719年に、ジャン・ボージルが作った、とある・・・。なるほど、なるほど。イヤ、水が出るところを作ったのではなく、水が出るところを含めた全体建築・彫塑こそがパリのフォンティーヌなのだったぞ。

 道を渡ってパチリとします・・・。

 こんな調子の日々もいいものだと心の底から思うのです。