セガン初期実践ー第1教育論解題のために

 それまで歩んでいた人生行路とはまったく縁のない白痴教育の世界に踏み出したその最初の足跡が、「H氏へ われわれが14ヶ月前から為してきていることの要約」という記録である。セガン第1教育論と呼ぶことにする。
 セガンが白痴教育に関わるに至った経緯については、アメリカに渡って書かれた論文「白痴たちの治療と訓練の起源」(1856年)に綴られている。そしてそのことについては多くの研究者が紹介しているところ。
 セガンが教育・訓練をした対象児H...家のアドレアンは、どのような家庭の子どもで、何歳ぐらいだったのだろうか。セガンはそのことについて直接に論究していない。だから、時代的社会的背景や第2次資料等から推測せざるを得ない。結論(推論)からいえば、H...家は有資産階級、アドリアンにはなんとしても識字能力をつけさせなければならない事情があった。
 アドリアンの年齢を推測させる記録がある。それによると、8歳ほどの子どもであった。