まとめと課題

 終日、セガンの第1教育論と第2教育論の位置づけの考察。具体的には翻訳解題のリライト。以下のタイトル。

オネジム=エドゥアール・セガンの初期白痴教育実践の成立事情
http://www-cc.gakushuin.ac.jp/~920061/aseguin183912.pdf

 不治者救済院でのセガンの冒頭挨拶をどう読むのか。中野善達氏の訳文では、内務大臣がセガンに白痴教育の任務を与えた、と読むことができる。おそらくこの訳文故に、研究史上、セガンは公的機関から招かれて白痴教育を行うことになった、とされてきたのだと思われる。
 ぼくの訳文では、セガンが内務大臣に白痴教育の機会を与えてほしいと直訴しており、その要望に応えてくれたことに対する謝辞となる。この上訴の部分が本当かどうかが、ずいぶんと悩まされたことだった。結局史料発掘で立証しなければならないのだが、直接的史料については紛失されており、その内容を継承している史料については発掘することができた。
 今日の執筆作業と重なるのだが、セガンは、私立学校開設にあっては公教育大臣に直訴しており、救済院に収容されている子どもたちの教育に携わることに関しては、内務大臣に直訴している。いずれもも、関係機関による資質審査によって合格となっており、その点では、セガンの白痴教育は質の高いものとして評価されたと言えよう。それはそれでめでたしめでたしなのだが、20代の一介の若者が、一国の大臣に直訴し、それが受け入れられるというシステムそのものに、ぼくは驚かされる。それが一般的だったのか、セガンの場合は特殊なのか。
 こんなことも考えさせられる。