ちょっぴりクリティーク作業

 セガンが「1856年論文」末尾で書いていたスペインの修道士たちによる精神療法のことが不明のままであったが、今日はちょっぴりそれを確認する入り口に立つことができたのではないかと思う。
 セガン『1846年著書』の松矢勝宏氏による抄訳《明治図書世界教育学選集版》を読んでいたら、セガンがフィリップ・ピネルの言葉を引いている箇所が目についた。『労働』の優位性を論じる中でピネルが引用されている。ピネルの『精神病者の治療』のなかで「・・・(スペインの)サラゴゼという村に、ウルビ・エ・オルビという単純な碑銘を持つ施設があり、云々。」とある。要は農業労働が「患者に理性をもたらすのに最も確かな、最も効果的な手段」だというのだ。
 早速、セガン原著の該当箇所を検索する。531〜532頁がほぼ該当する。「ウルビ・エ・オルビ」というのはセガン原典ではurbis et orbisとある。ぼくの持っている仏和辞典ではurbi et orbi(ユルビエトルビ)とある!待てよ、では、ピネルの原典ではどうなってるのだ。・・と、ピネルの著書を探し始めた。セガンは、同所では、書名をTraité de l'Aliénastionとしている。 別の箇所で1809年刊のTraité de l'Aliénastion mentaleとしているのと同一書である。悪戦苦闘というほどでもないが、Traité médic0-philosophique sur l'aliénation mentaleという書物を見いだし(第2版、1808年)、これだろうかと頁を繰ったところ、あたりだった。セガンが引用している所は、pp.237-239.で、問題としたところはurbis et orbisとなっており、セガンの引用に誤りがなかったことを知った。意味は「万人のために」というようなこと。
 こんなことを発端として、精神療法史などを理解する作業に入った。