「盲腸の戯言」2

 今日もまた、研究室明け渡し作業に大汗をかく。作業に疲れて、幻のエッセイ集『盲腸の戯言』をめくります。

「同時進行のメタファー 旅先にて 幼少篇
 ただいま、天王寺を出発して20分ほど経ちました。車窓からは、山々の新緑が飛び込んできます。本当に、もう夏なのですね。
 忙しい(と、他人からは思われる)教育実習参観指導の旅も、おかげで、心緩やかな旅として送ることができます。
 そろそろ三重県入りかな。車窓の両側は山ばかりが続いております。そうだ、赤目の滝の見学に行きたいな。子どもの頃、一度だけ訪ねたことがありますが、あの頃の赤目の滝はとても雄大なものに思われたのですが、本当はもっともっと小さいものであったのに違いありません。え?赤目の滝にはどんな用事で行ったかって?
 小学校の高学年(から中学1年)の頃、ぼくは、植物学者の牧野富太郎さんに思想的にも行動的にも大きな影響を受け(隠れた生育史なのだ)、 ただいま、名張に到着! 牧野さんのように植物についての専門家になろうと、とくにシダ類について採集をしていました。近くの山、遠くの山、シダについての珍しい種があるのではないかという情報を、学校で得たり、母親から得たりすると、居ても立ってもいられず、出かけました。赤目の滝もその内の一箇所です。
 採取したシダは、きちんとファイルをし、自由学習と称して、担任に提出しました。結局、担任からは何のリアクションもなく、三重丸ぐらいをもらって返されておりました。シダの名前が分からないと、隣町の津市にある県立図書館に行って調べたり、三重大学農学部の先生のご自宅を訪ねて、教わりました。けっこう夢中になったものです。・・・・」(後略)
 自転車で、無賃乗車の電車で、あっちこっちと出かけたものだなぁ。これという友人が居なかったから、シダがぼくにとっては思春期入り口の友人となったのだろうな。