パンダ弁当
細君が「出かけていい?」と聞く。珍しい。いつもなら「ちょいと出てきます。」なのに、同意を求めるとは。さては・・・。上娘とまるでハイキングかデモかの姿で昼前にいそいそと出かけた。ぼくはセガンの「白痴教育論」でも学ぼうかと机に向かったが、どうにも頭が働かない。風呂に入れば少しは気分が変わるだろう。
風呂上がり、確かに気分は変わった。ただし、「ちょっと出かけよう。」 細君と上娘と同じだわ、これじゃ。彼女たちがどこに行ったのかは分からない。ぼくは柏のヨドバシカメラで印画紙、帰りにマミーマートでリンゴ、魚の切り身、猫トイレの砂の買い物。
ご飯は炊飯器にかけておいたから、後はおかずのみ。細君たちが夕刻には帰ってきたので、さて、おかずでも作ろうか、と台所に立ったら、「折角ご飯炊いてくれているけど、はい、これ。」
「パンダ見に行ってきたの。」
「すごい人だったんじゃない?」
「40分並んだかな。」
「ゲートで?それともパンダ舎の前で?」
「パンダ舎の前。」
「このお弁当はそこで売ってたの?」
「ううん、上野駅コンコース。コンコース、パンダパンダパンダパンダ…。」
細君と上娘とが、相も変わらず言葉足らずで代わる代わる答えた。満足げな顔。おらっち、ありがたくも、おいてけぼりを喰ったけど、40分並んでヒステリー起こさずにすんだのは天の助けだったなぁ。