徳島便り番外2 これがおいしい竹輪


 しかし、寂れつつある商店街ー事実、「本日閉店!」の店があった。そしてそのうたい文句は、浅草橋横の常時「本日閉店!」とはまったく趣が違っているーには八百屋、スーパー、土産屋などはなく、ぼくの夜の食事のあてがつかない。さてどうしようか・・・。
 そうだ!先年の腹減り道中の帰路にゆったりと散策した徳島駅構内の地下商店街を覗いてみよう!
 「そうだ!京都へ行こう!」は京都が確実にあるからコマーシャルになる。だが、「そうだ!駅地下に行こう!」は、物体としての駅地下はあっても、お休みという文化があったのだ。ん・・・・宿のフロントに訊ねる。
 「おいしい竹輪を手に入れたいのですが、どこへ、どのようにして行けばよろしいでしょうか。」 フロント、にっこり。
 「それでしたら、私どものところにおいておりますのが、お勧めでございます。」
 こういう風に、足止めを食らわすから街が寂れるのか、街が寂れたから足止めを食らわすのか、その因果応報のほどはわかりませぬが、ホテルが出すのはまずかった、しかし、ホテルが置いているのはおいしい、ということとは少しく矛盾するような気がしないでもないし、「フロントのお告げ」に信用を置くのか、という根本問題ー疑念ーはあるが、今夜食してまずければ土産には絶対買わないし、二度とこのホテルを利用しないだけのこと。
 「では、ちくわください」と、近代ホテルフロントに告げる言葉とは思えない、まるでおでんを注文するような心持で、美人に対峙したのであった。
 部屋にて。香ばしさが口中に広がる。ふごふご爺さんであっても快適な歯ごたえ。朝の竹輪は分厚いゴム輪でしたな、比喩すれば。
 このホテルは、食事サービス部が自己主張においてかたくなで、接客サービス部が客の要求するところをすばやく汲み取る柔軟さを持つ、と採点しておこう。
★ 発見! 懐かしさを楽しめます。
サトウサンペイの「ジーの思い出し笑い」