床屋談義

 「おはようございます。」
 「よー、いらっしゃい。教授先生。」
 我、前なる鏡、じっと見る・・・・。グォホィ・・・
 「ずいぶん髪伸びたね。教授先生。」
 「帽子代わりにしてたけど、天辺無いし、襟のところが返って暑いですねぇ。」
 「冬になるとてめえの髪、マフラー代わりにしてんだもんねぇ。教授先生。」
 チョキチョキと鋏を入れながら、ムッシュがあれこれと語りかけてくる。面白い。
 「群馬県知事が公舎に女連れこんでんだよ。教授先生。」
 「ほほー、今度は知事様か。別宅構える度胸はないんですねー。」
 「クソ暑いのに、女、ダウンジャケット、頭からすっぽり被ってやんの。教授先生。」
 「表で頭隠して公舎で尻隠さず、だね。」
 「教授先生も、うまいこと云うねぇ。」
 「ムッシュだけだよ、オレのバカッ話につきあってくれるの。」
 「だってよー、それはそれ、客商売だから、こちとら。」
 二人揃ってガハハハハ。ちょい、会話のリズムを壊してやろう。
 「それはそうと、太ったんじゃないか。美味いモノ食ってんだろう。教授先生。」
 「美味いモノ食ったら金が出てかぁね。痩せちまうぜ。」
 ムッシュ、ひげ剃りの刃物持って、ガハハハハ。ちとあぶねーな。
 「水飲んでも太るってね、太る人は。教授先生。」
 「財布には水は入らねえしなぁ。やっぱり太らないよ。」
 「教授先生、補聴器、ちゃんとしたの買いなよ。話が噛みあわないよ。ガハハハ。」
 「そうそう、昨日、接客中に補聴器がストライキ。何も聞こえません。」
 「その客、よっぽど嫌いだったんだろ、教授先生。そういうとき、どうすんだよ。」
 「プイと部屋を出る。そしてすぐ戻り、会議です、と言う。」
 「うまい手使うねー。」
 「ムッシュだと、ひげ剃りを目の前でブラブラするのな。」
 二人揃って、「アブネーナー、ガハハッハ。」
 ☆昔ながらの地元の床屋さんはストレスがすっかり取れて、気分爽やかになります。街のカウンセラー。こうしたカウンセラーのお世話にならない「近代都市」化現象が、人々の心を陰鬱にしています。何したってあらゆる関係性に何ら変化を産み出さない髪型の注文などせずに、<重い心をソフトにマッサージ>をお任せで、どうぞ。
●今夜は自主ゼミメンバー2人とちょっと豪華な夕食会。池袋にて。
○明日はさらに豪華版の飲み会を有さんと。有さんのお・ご・り。