「華がないですから」

 研究室の書棚に折り鶴が何羽か飾られた。古色騒然という言葉がぴったりの戦前の雑誌コーナー。専門分野の人間に言わせれば稀覯書がずらりと4段ほど並んでいる。無関係の人間からすれば、まあ汚らしい。昨今のカラー表紙で製本された、並べればカラフルな模様となる書架も、雑誌・芸術自由教育、綴方生活、教育・国語教育、実践国語教育、改造等は、その背表紙はモノクロ。しかも変色して汚らしい茶色。なおかつ表紙が捲れたりしていて、いかにも塵そのもの。ぼくの青年期後期の研究活動の証であり、まだまだ研究資料として活用したいと願っている史資料類である。
 研究室で学習をしていた学生が、その学習活動の中で、折り紙作業をした。作業も終わり、さてこの折り鶴たちをどうしようかと考えたのだろうか、書棚に並べてくれた。曰く「華がないですから。」 そうなんだよ、中身は華盛りなんだけどね、研究で使わない限りとても華などは覗き見ることができません。
 ありがとう。心がすっかり安らぎますね。