天然ウナギを食す

 池袋の三木から「天然ウナギが入りました。」と連絡があった。今年は丑の日にウナギを食していないこともあり、職場同僚を誘って、いそいそと出かけた。
 肉厚!日頃いただいているウナギとはまるで食感が違う。「おいしい」を連発しながら蒲焼きをいただき、続いて白焼きをいただく。ふにゃふにゃじゃない!こちら地方のグルメさんたちはウナギの食感をとろけるような軟らかさと表現する。しかしぼくが「ウナギ」に持ち続けてきた食感イメージは歯ごたえを感じる旨みだ。蒸していない、つまり油抜きをしていない白焼き、そして蒲焼きこそが本物の「ウナギ」なのだ。「蒸していませんよ。」とのマスターの声ですべて納得した。同僚に語る。
「これぞ関西風なのですよ。これが本物ですよ。今でこそマグロのトロを貴重がっている関東者たちですが、じつはかつては油身(トロ身)は棄てていたのですね、ご承知のように。脂っ気が嫌いなのではなく腐りやすく当たると命取りだから、脂身を避けていたわけですけれど、ウナギも同様の扱い。関西はとことん食べ尽くす、食い道楽。棄てるなんてことあり得ない、油を抜くなんてあり得ない。どうです、この身の厚さ、そして優しく迎え撃つ歯ごたえ、旨み。これこそ本物のウナギです。」
 あまりにも久しぶりの関西風ウナギを食して舞い上がっての言葉の自己満足、そして店の天然ウナギの提供による大満足で店を後にした。「今度いつ入るか分かりませんが、入り次第連絡を差し上げます。」 そうですね、あまり頻繁だとそれはそれで困ります、こちらの懐事情もありますので。
 子どもの頃、仕掛けたヤナに入っていた細身のウナギを、始めは捌きの真似事をし敵わず、結局はぶつ切りにし、甘辛に煮て食卓に出したのを思い出す。滅多に食べられなかったウナギだが、一応天然物。天然ウナギの煮付けである。おいしかった?そんなことを考える余裕もありませんでしたな、「ウナギの佃煮やな、これ」と母に言われた言葉で舞い上がっていましたから。誉め言葉だと思ったわけですな。