ツルと姫が「ふじっこ」を求めて吉池に行く

 昨日、姫様におつきあいいただき、パリへの土産を吉池地下スーパーに買い出しに行った。パリのお方からご要望の出されていた品一覧表を手に商品棚通路を探し歩く。といっても、ご希望の品は乾物類なのであっちこっちをさまよい歩くことなく、ほぼ一定。「これは何袋にしましょうかね。」などと品数の相談をしながら、手早く籠に入れていく。さほど時間を要することはなかったが、ただ一品、ご指定の「ふじっこ」が見つからない。「鮮魚部の乾物の棚にありましょうね。」と、河岸を変えて探すが、「ふじっこ」は見つからない。「吉池はふじっこと喧嘩でもしたのかな。」と姫様がつぶやく。「池袋のデパ地下で探しましょう。」と姫様のリード。東武デパ地下の乾物売り場で「ふじっこ」を探し求めるが、置いていない。結局は、「塩昆布でいいんですからね、これにしましょう。」と、ふじっこより高級な品を購入して、終了。土産の品々は我が研究室に留め置くので、目白まで出て、駅頭で姫様とお別れした。
 パリには日本食品を置いている店が、ぼくの知っている限り、3店ある。いずれもきわめて高額の値札が貼られている。某店などでは、時として、日本語の「賞味期限」(が切れた年月日)表示の上に、さらに賞味期限を新しく定めたフランス語が張られていることもある。だから、日本からパリに旅に出る「知人」がいれば、日持ちがし、必需品の食品などを手土産にしてほしいとの要望をなす。「日本的な物」は人それぞれだろうけれど、昆布や花鰹、茶葉などは、絶好の土産品である。いずれも重くありませんしね。ただ、花鰹は嵩張りますね。
 さて、買い物行動の合間、姫様と無言の関係を保つことはない。今回も豊かな会話が交わされた。
 この間のぼくの「天然うなぎ」食行動「落陽」旅行動などは、絶好の話題提供。「私も連れて行きなさい!」と少し頬を膨らませて強いご要望が出されながらの、あれこれ会話もまた楽しい。その会話の中に登場するのが、姫様も行動を共にされたこれまでの楽しい放浪、旅日記。「焼き肉を探し求め、聖籠流しの街を爺とねねが行く」(青山通り放浪日記)とか「鶴福猩が古代を旅した」(伊勢伊賀地方の旅記録)とか。昨日は、姫様が編集なされた最近書『五十鈴川の鴨』(竹西寛子幻戯書房刊)を贈呈いただいたこともあり、とくに同書タイトルからイメージを借用し、伊勢・伊賀地方への古代の旅が話題に上った。そしてパリ、猫のことも。
 それにしても『五十鈴川の鴨』の装丁の寂漠たる様。静かに静かに、心に染みいる作りである。姫様の美的感覚の秘めやかさを、改めて発見し申した次第でございまする。
 「ツルさんは○○○(某作家の名前が入る)より文章が上手。」「ご専門の内容ではないけれど、(猫などの)エッセイを纏めて、私が編集したいです。」とおっしゃる。ありがたいお話。文章表現に磨きをかける訓練を続けて参ります、姫様。