フレネ教育より


 今日の授業ではフレネ教育について少し触れる予定。たいそう珍しいとぼくが勝手に思っている、フレネ学校の在校生の集合写真を扉にした文集『レ・ピオニエ(LES PIONNIERS)』なども提示したい。写真は1979年当時のもの。フレネ学校は、南フランス、地中海に面したニースから山岳方面に車で1時間弱ほど行ったヴォンスという小さな町外れの、山というか林の中にある。山・林は学校の大きな一部。校庭の片面は村落に通じる方向、その反対側は険しい斜面になり、その斜面を降りると渓谷となっている。自然観察・研究に絶好のロケーションである。写真のバックの切り立った崖は、子どもたちの絶好の遊びフィールド。この写真の当時と、ぼくが訪問した年々の最近年2002年とではさほど変わるところがない。
 次の写真は2001年2月13日。子どもたちは、この厳しい斜面を走り降り、走り登って、「地質」の観察をくり返していた。ぼくは、木枝にしっかり掴まり、慎重に足を運んだ。渓谷にようやく降り立った頃、子どもたちは、教室で次の学習にとりかかり始めていた。

 文集のタイトルを日本語に訳すると『開拓者たち』。一斉授業、詰め込み教育、記憶・暗記・吐き出し教育という旧教育を打破し、子ども一人一人の興味・関心を土台にした、子どもから創り出される諸文化を学習材とするフレネ教育は、まさに「現代学校」の「開拓者」。セレスタン・フレネがその教育の「開拓者」であるとともに、そこで生活する子どもたちもまた、学習の「開拓者」。その大きな「武器」(道具)となるのが手作りの「印刷」物である(「学校を印刷所に」)。
 我が日本では生活綴方という先例がある、英語圏ではwhole languageという先例がある。
 ぼくの人生の残りは、それら「開拓者」研究に注がれることになろう。