2012年も続く「セガン」の年

 昨夜、もう1時間もすれば新しい年、という頃合いに、グリーティングカードが飛び込んできた。フランスでのセガン研究の際に通訳などのお世話になっているKさんからだ。いや〜2011年も本当にお世話になりました、とフランスでの日々を思い起こしながらカードを開いた。添えられているメッセージに目が釘付けになった。
 「昨日今年最後の嬉しい便りが届きました。クラムシーから、(クラムシー科学芸術)協会長のルモワンヌさんの名前で、やっと例のセガン本の献本へのお礼の手紙が届きました。 フランス語のテキストにあったセガンについての情報を読み、感動しました、とありました。/さらには、2012年10月に、(クラムシー科学)芸術協会として、セガンに関するシンポジウムを開催することを希望されているとのことで、もしそれが叶うようなら先生に参加して頂き、さらに何か発表をお願いすることは可能でしょうか、という打診がありました。/お返事をどのようにしたらよろしいでしょうか? また詳しくお話しできたらと思っています。 」
 Kさんのお力を借りて、『知的障害教育の開拓者セガン〜孤立から社会化への探究』(新日本出版社、2010年)の発掘史料に基づいて記述した箇所などのフランス語抄訳を添えてクラムシー科学芸術協会長に宛てて献本をしていたのだが、その返礼がKさん気付で送られてきた知らせで、返礼の中に「感動した」との文言があると知らされ、こみ上げるものを感じた。フランス社会でも知られてこなかったセガンの「実像」―しかもそれは些細なことではなく、セガンの偉業形成へと橋渡しとなる像であり、かつフランス社会の近代初期の実像である―を、(東洋の小さな島国の一非博士老研究者の手によってではあるが)明らかにされたことに対する喜びの感情を感じたからである。やったね!
 2005年7月2日に学習院大学文学部大会議室で開催された、清水寛先生編著の大著『セガン 知的障害教育・福祉の源流ー研究と大学教育の実践』(全4巻、日本図書センター、2004年)の出版記念等の会において、会の結びで清水寛先生が「2012年はセガン生誕200周年です。この時までに新しいセガン研究を為し、その成果を携えてクラムシーで開かれるであろう国際シンポジウムに参加します。」となされた社会的誓約が本当になりつつある。その作業は、いつしか「ご本尊」から「黒子」に完全に移されてしまってはいたが、喜ばしい気持ち、感無量の思いで、昨夜は眠れないまま、今年の夜明けを迎えた。
★読者のみなさまへ 新春の言祝ぎを申し述べることが後回しとなってしまいました。なにとぞ本年もよろしくお願い申し上げます。
★HP「川口幸宏の教育の旅」に新作「旅路」をアップしました。