嵐は歌歌いでは無く窓外の景色。今はだいぶん収まったけれど、学園の木々が大きく揺れている。閉じこもって入力作業・・・と思って出校したが、「私、今日、大学を除籍になります」という電話の主との対応に時間と力とを取られた。別れ際には、とりあえず、明日からの具体的な行動を約したが、根が深そう。
 義父によるここ10年間、止むことの無いDV被害から身を守るために、住所そのものを「隠す」ことに神経を使っている様子が見て取れた。「家を出て身を守ってきたが、私宛に届けられるあらゆる書類を目にすることができないという結果を呼んでいる。学籍を失えば、私を証明する一切のものがなくなる、従って職に就くこともできない。」 それで、「明日をどう踏み出そうとしているのか。」と問うたけれど、きちんと展望し切れていないことは明らか。「転出届」を出したがしかるべきところに「転入届」を出していないから、今は住所不定となっている。この現状を抜け出るのは、あなた自身の力でしかできないのだから、そこを乗り越えないとどうしようも無いでしょう、と説諭。義父の暴力に相当怯えていることは手に取るように分かる。弁護士、警察官、民生委員、いろいろと社会はあなたを守ってくれるシステムを用意している、と現状打開の方向性を示唆。
 一度研究室を後にしたが、その後2度舞い戻ってきた。心の迷いを整理しきれない様子。
 人生嵐のS君の明日に幸いあれと祈るしか無い。