マキ材で建造した筏

この夏のフランスへの旅で「セガンは終わりました」と宣言した。新しい研究発展への大きな期待を持って。ぼく自身は中近世文化史へと舵を取る。編集者の姫様から強いお勧めをいただいたこともある。素材は、マキ材で造る筏流し。ブルゴーニュ地方ヨンヌ川が育てた生産文化。近代社会の誕生と発展によって消滅させられたが、実ば現在のパリの建築文化をひっそりと支えている煙突群と深く関わっている。マキ材も筏も姿を消したが、それらが実在した証はしっかりと保護されている。かつて「使いもしないのになぜ煙突が立っているのか、あれほど無駄なものはないだろ?」と、自称歴史教育研究家のさるお方が、「煙突が立っている根拠を明らかにせよ」と〈宿題〉を下さったが、このお方の低劣極まりない「合理主義」に応えるつもりは微塵もないけれど、文化と文明との関係を紐解く積年の研究課題に応える一助となると、思う。
クラムシーのヨンヌ川べりに立ったまさにその一帯が、老いも若きも男も女も、近在の者総出でマキ材で造る筏建築作業を行った所であることを悟った瞬間、ぼくは作品としてまとめ上げたいという思いが強烈にわきあがって来た。
○明日から釜山。