「年始回り」

 正月2日は「年始回り」が恒例であった。ぼくはこちらに親戚を持たないので、もっぱら細君の親戚を「年始回り」した。しかし、ここ10年は「年始回り」をしていない。細君の実家にご挨拶に伺う。そこで、細君の弟親子と年始の挨拶を交わす。それでおしまい。簡素になったと言えば簡素になったし、それだけ、「家」的なものがぼくの意識の中からも現実からも姿を消している、ということなのだろう。
 下娘と上孫、下孫と北千住で落ち合う。上孫と下孫がぼくの顔を見て破顔一笑、両の手をそれぞれに取られた。孫と手つなぎで歩く姿など、考えたこともないから、おっかなびっくり。神経を使う。
 上孫がどちらかというと太った体つき。剣道をしていると言うからもっとすっきりした身体の方が適切だと思うのだが、身体の変化の現れる成長期なのだろうか。10歳。体重はと聞くと39キロだと答える。「ジジは27キロだったぞ。」さすがに栄養失調だったから、とは言葉を添えなかったけれど。歩きながら「今年の夏、二人で、旅しよう。」とあれこれ語り合う。あの悪夢は繰り返すことはないだろうと思うけれど、ちょっぴり不安が走る問題ではある。なんたって、あっち行こ、イヤ、じゃ、こっち、イヤ…、何が面白くて「旅」に出たんだかと思うほどの駄々ごね。今年の夏は北海道に決まるようだが、もう11歳になっているはずだから、ジジの面倒を見てくれるだろうね。かなり楽な旅になるだろう。
 みんな元気な初顔合わせだった。