筏師哀歌」の訳大改訂

 本年1月23日にアップした「筏師哀歌」は、事実そのものを理解しないおおうつけな「作品」である。しかしひどいモノだな。というわけで、これから何度も改訂作業を行うことになるけれど、今日の到達は以下。

クラムシーとパリを行ったり来たり
巨大ないかだのご主人は
連結薪を操って
ブルジョアたちを暖める
川にクソ

きゃつらが水門に着いたなら
貧乏人と金持ちを
鈎付き棒*で分けるのは    *picot ピコ 
岸辺に立ってすることさ
川に尻もち

小塔河岸を手に入れたのは
トロールのお殿様
さあ、ちび殿、お椀をおしまいなさい。
渡し板は必要ございませぬ (*)
クソを川で
(*)ラトロールの領主はヴィレーヌとブルーニョンの領主でもあった。領主のギラルド・ド・ソゼは1711年に旧クラムシーの南端にある小塔河岸(ブヴロン川沿い)に居を構えた。「お椀」とは、古い軍事用語で、兵士や船員が一緒の食べるスープの木製の椀のこと。「椀をおしまいなさい」という表現には、「いい加減で争いごとを止めなさい」という意味が込められている。「渡し板」とは敵地攻撃の際に城郭壁に渡される板。この節ではクラムシーはおまえさんには渡さないよ、という戯れになっている。

森の周りのあっちこっちから聞こえてくるよ
ツグミのヒナの歌声が
「作ってもらった巣が気に入っていたのに
木は行っちゃった」
流れに沿って

ヨンヌ川がセーヌ川に合流するのは
モントローの近く
なのに心はバスティーユ
それでうきうき
川にクソ

守護神の息吹が元気づけるのさ
イル・マルゴー(*)の男どもを
キャツラはクラムシーの男どもと、よく似てる
ベルシー河岸へ
川にクソ
(*)ボルドーの近くジロンド川(フランスのアキテーヌ地域圏ジロンド県内を流れる川)の中洲の小さな島。独立精神が強い。

頭一杯に
あんなことこんなことを詰め込んで
聞かせてやろう、目にしたことを
聞き込んだことを
クソしに川へ

あの話がちゃんと頭に残るように
そう、素敵なマオーのことさ(*)
パリに向けて筏流しをする前に
男は入れ込んでおいていた…
川に尻
(*)マティルド・ド・ダンマルタン(Mathilde de Dammartin)またはマティルド(2世)・ド・ブローニュ(Mathilde (II) de Boulogne, 1202年 - 1260年)は、ブローニュ女伯。名はマオー(Mahaut)とも呼ばれる。1248年にポルトガル王となったアフォンソ3世と結婚し、ポルトガル王妃にもなった。ポルトガル語名はマティルデ・デ・ボロニャ(Matilde de Bolonha)。
ブローニュ女伯である母イドと、女婿で共同統治者であるルノー・ド・ダンマルタンの娘として生まれた。1216年、母の死により伯位を継承する。1223年、クレルモン伯フィリップ・ユルプル(フランス王フィリップ2世と3番目の王妃アニェス・ド・メラニーの息子)と結婚した。彼はマティルドとの結婚と同時にブローニュ伯を名乗り、ブローニュ、モルタン、オーマール、ダンマルタンの共同統治者となった。
ルイ8世が1226年に若死にすると、フィリップ・ユルプルは兄嫁で摂政のブランシュ・ド・カスティーユに対し反乱を起こした。1235年にフィリップが死に、マティルドは一人で統治をしたが、男性の統治者が必要となり1238年にポルトガル王子アフォンソと再婚した。アフォンソは1248年に兄サンシュ2世の後継として王位に就いたが、ブローニュ伯も兼ねた。しかし、5年後の1253年にマティルドとアフォンソは離婚した。前夫フィリップとの間に一男一女をもうけていたマティルドであったが、アフォンソの間に子供が育たず、高齢で今後生まれる見込みも少ないことから、王位継承者の欲しいアフォンソが離婚を必要としたと見られている。言い伝えによると、マティルドは即位した夫に同行せず、ブローニュに残ったままだったという。
理由は不明であるが、マティルドの息子は王位を主張してイングランドへ渡った。彼は子孫を残さなかった。また、娘はシャティヨン=モンジェ卿と結婚していたものの、子供が育たなかった。マティルドの直系が絶えると、伯位は従妹アデライード・ド・ブラバンブラバント公アンリ1世とマティルド2世の叔母にあたる妻マティルドの娘)に継承された。

ベトレームの司教様はなさいます
子どもに洗礼を授ける時
洗礼の日子どもを素っ裸にし
水にそのまま浸けてしまわれる
川に尻

ワシの歌がちゃんと韻を踏んでいないなら
捨てにゃならん
思い出を取っておきたい
本当の物語を
川に柳編ラケット持って*
*原文はDes Chis… dans l’iau. Chis… に該当する単語はchisteraと思われる。chiseraはバスク人の球技pelote用の柳編みの樋型手袋を意味する。

もしもおまえたちがシッシュ橋から我が歌を投げ捨てるなら
歌は流れ去っていく
その時、大きないかだの我が仲間たちが
鈎付き棒を突き出すさ
川に尻