うどん

今日の昼食はしっぽく風。薄味ですが、至極満足いたしました。
入院してはじめてうどんが出たとき、大いに面食らった。左手は全く働かない状態に加え、ベッドの背を起こしそれに背を預け、身体の前に据えられた簡易テーブルに置かれたうどんを食べる。箸で一本ずつつまみあげ、口に運べというのだろうか。溢してもいいようにエプロンを首にかけてもらってはいるが、とてもまともな食事とはいえない。拒食しようかとも思ったが闘病生活に耐えられる体力はどうしても必要。看護師の右往左往の間隙をついて、フォークを用意してもらった。しかし箸よりはちょっとまし、という程度でしかなく、口回りを、幼児の如くベタベタという屈辱を味わった。汁を口に入れるのも、当然、右手のみの働き。箸をテーブルに置き、どんぶりの縁を持って口に運ぶ。食事は文化なんて彼岸の言い分。エサとしか思えなかった。ウソだとお考えの読者さま、前屈みができない状態で利き腕いっぽんで、うどん、そばを召し上がってみてください。もりやざるではなく。
エサうどん食から逃れることができたのは、ベッドから降りて食事ができるようになった第3週め。うどんはやっぱり美味しいと思えました。
ぼくは左半身麻痺という症状です。見えるところについ気が回りますが、見えないところも命に関わる麻痺があります。気管支、食道。汁が気管支に紛れ込む危険性は大いに高いのです。かといって水分を多く採って血栓症を予防しなければなりません。そのようなことからでしょう、汁物すべてにとろみがつけられています。とろみうどん汁、とろみ味噌汁、とろみ番茶。あじけないものです。
ところが、先ほどのうどんにはとろみはありませんでした。シャバはもうすぐなのでしょうか。