街に出た

○行程表
 今日は朝散歩は中止。どうしても松戸まで出かけなければならなかったから。入院してからかれこれ50日になるが、この間さまざまな経費の支払いは細君と上娘におんぶしていたが、それも限界になってきている。キャッシュカードを所有しないので、銀行窓口で現金を下ろさなければならないからだ。いつ行けるだろうと思案していたところ、昨夜、細君が今日休みが取れるので同行してくれる、との色よい返事。家のローンの返済方法についての相談もしよう、ということで、今日出かけることとなった。話のついでに、帰路、柏のデパートにより、園芸用品を買いましょう、ということになった。気持ちは勢い込んでいるからあれもこれもと出先に用事を増やすのだが、さて、昨日、ようやく30分無休憩杖歩行ができたばかり、しかも疲労困憊だったのだ、途中でギブアップならまだしも、倒れるのではないかと杞憂しないではないけれど、細君の支援があることに気持ちは頼ることに落ち着いた。行程はこのようになった。
 自宅→(徒歩1)→JR南柏駅→(電車)→JR北松戸→(徒歩)→銀行→(徒歩)→昼食→JR北松戸→(電車)→JR柏→(徒歩)→そごうデパート→(徒歩)→高島屋→(徒歩)→東武・柏→(電車)→東武新柏→お茶→(徒歩2)→自宅 徒歩1はほぼ直線で1200メートル、車が多く行き交う、徒歩2は住宅地の中をいくつかの角を曲がり歩く生活道路で1000メートル。昨日の杖つき歩行は徒歩2ほどの距離。
○駅までは遠い
 11時出発。コツンコツンと音を響かせ坂道を登ってバス道路へ。後はひたすらまっすぐ駅に向かって歩く。最初のバス停を越えて少しの所でバスに追い越された。そうか、バスという手もあったんだ。日常利用しないから考えもしなかった。二つ目のバス停を過ぎる。昼のこの時間帯は運行本数が少ないだろうと思いやり過ごしたのだがまたもやバスに追い越される。三つ目のバス停の所で疲労を覚え始めたが、ええい、駅はもうすぐだと、足を止めずに前に進んだ。
 南柏駅前に到着。階段にしようかエスカレーターにしようかとまごついたら、細君はエレベーターにエスコートしてくれた。元気いっぱいの新入学高校生親子たちが相乗り。何か変だなと思いながら、当然口に出さずにいた。あっちこっちの駅で、同じ光景に出会う一日だった。そうか、入学式か。うーーーん。エレベーターは確かに楽だなあ。人生も楽したいのだろうか。その方がいいに決まってますよね?おかあさま。北松戸では気の弱そうな杖つきおばあさんはエレベーターに乗せてもらえませんでした。
○「娘さんですか?」
 北松戸で降りて国道6号線を渡る。信号待ちの間、大型産業トラックが何台もうなりを上げて目の前を通過していく。怖いです。さあ、銀行へ。窓口で住宅ローンの返済方について相談をしたいと申し出た。係員と面談。住宅金融公庫が相方なので、そこへの連絡調整をしてくださるという。ぼくの横には細君が座り、ぼくの言語不明瞭分(構音障害の後遺症)を補って話をしてくれた。助かります。
 と、係員が、「こちらの方は娘さんですよね?」と問う。もう笑いこけるしかない。すぐに、日常では絶対にいわない「女房です。」と応えたが、係員は恐縮しまくっていた。後に、細君は、「まあ、若く見える、と言ったんだから、睨まれずに、あの人も助かったんじゃない?」と、にこにこしながら言っていた。おまけに追加して、「あなたが年より老けて見えるし、私は若く見えるし、親子だと見ても不思議はないのよ。」と至極ご満悦。「それにしても、ずいぶん前には、床屋さんから、あなたはぼくのおめかけさんだ、と見られたことがあるし、ご近所のお店でも夫婦だと認められるのに時間がかかったしね。今になってもそうだというのは、おもしろい。それにしても、娘、というのは初めてだなあ。」・・・で、用件は無事済まし、細君と上娘への借金も返済することができました。
○「60日ぶり」
 出かける前に、お昼は外食でと決めた。何にするか。ぼくは入院中から、カレーが食べたい、焼き肉が食べたい、マンゴージュースが飲みたいとぼやいていた。いずれも禁止食品だと思い込んでいたから、ぼやきの声はエスカレートしていった。退院時の栄養指導で、禁止食品はない、栄養バランスとカロリー、塩分には気をつけるように、と言われ、やったーっと思わず叫んで栄養士さんをあきれさせたのだった。それで今日のお昼は先の3食品を満足させたいと思い、細君に「銀行のそばにCoCo壱番屋があるからそこに入りましょう。」と誘いをかけた。同意を得て入店。牛焼き肉のせのミニカレー、マンゴーミルクラッシーを注文、併せてゴボウサラダ。おいしい!を連発。「60日ぶりに娑婆の味ですね。」細君はコロッケのせミニカレー。こちらもおいしそうでした。
疲労困憊の4時間

 その後、柏に出て二つのデパートをチョロ見し、東武線利用で新柏へ。疲労が強いので改札を出てすぐ前のモスバーガーでお茶タイム。後はこつこつ杖歩行。と言いたいところだが、疲労が強く、3度ほど小休憩。右脚付け根の痛みが強い。左足をかばうからだろう。このかばいが少なくなっていくよう、歩行訓練を工夫しなければ、と思う。自宅近くの雑木林の端に建つしゃれた和風住宅の庭の柿の木が花をつけていた。薄緑色のそれの群れは楚々として、ぼくの胸に柔らかい味わいで染みこんできた。あの花が柿の実に生まれ変わり、色づき始める頃に、ぼくは身体の自由を得られるだろうか。午後3時帰宅。ちょうど、ちかさんから、「学校に行ってきます。」のメールが飛び込んだ。今日から、講義が始まる。ぼくも外歩きの予行演習期が終わり、本格的に社会参加を意識した生活の開始だ。